是枝裕和監督の映画『万引き家族』が韓国でも好調だ。
7月26日に封切られると2日間で約1万人の観客を動員し、公開13日後(8月7日現在)には10万人を突破した。過去、韓国で公開された是枝作品の中で、最高の興行成績となっている『そして父になる』(2013年12月19日封切りで、累計およそ12万人)を大きく上回る見通しといわれている。
韓国では「家族映画の匠」(ソウル新聞7月31日)として根強い是枝ファンがいるが、今回はカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で最高賞(パルムドール)に輝いたという話題性や、口コミも相まって関心を呼んでいる。
公開されてまもなくソウル市内の映画館に観に行くと、365席ある観客席はほぼ満席。午後の早い回だったが、夏休みであるせいもあり、年齢層はばらばらだった。
映画が終わると、すぐに席を立つ人は殆どなく、エンディングロールの最後に是枝監督の名前が出てようやく、ぱらぱらと席を立ち始めた。中には座ったまま、ハンカチで涙を拭っている女性もいた。
「是枝監督ほど明確な答えを出すことができる人がいるだろうか」
韓国の大手ポータルサイトの「NAVER」での観客の評点は最高点10点満点に近い9.25点で、書き込みを読むと「余韻が残る」というコメントが圧倒的に多い。
「映画が終わった後、実際の映画鑑賞が始まる。じっくりとかみしめながらワンシーンワンシーン、台詞のひとつひとつ……」や「あまり期待せずに見たけれど、映画を見た後も予告編を再生し、余韻で心を癒やしている。信代役の安藤サクラが見せた目の光りはとても長い間記憶に残るようだ」というもの。「いいね!」が多くついたのは、「私たちは幸せなのに社会は(私たちに)『幸せなはずがない』と言う」と、当事者といわゆる「世間の目」のギャップについて指摘したものだった。
他には、「現代社会で家族について定義しろといわれたとき、是枝監督ほど明確な答えを出すことができる人がいるだろうか」という是枝監督に感嘆するものや、「安藤サクラが取り調べを受けて泣くシーンには本当に鳥肌が立った。演技とはいえ実際に起こったことのように徹底的に作り込まれている」と安藤サクラの演技を絶賛したものも。また、「映画のすべての瞬間が不快に流れるが、最後の信代と柴田(リリー・フランキー)の言葉に慰められた。(中略)おのおのがどこにいてもそれは家族なのだろう」というのもあった。