「上」が成果物をチェックする際に、日本語の動画では「上」の人が読めない。なので、中国語の動画ばかりがつくられる。また、「上」はさらに上部に報告をおこなう都合上、動画の出来のよしあしという定量化しにくい要素よりも、客観的にわかる数字をほしがる。
すなわち、「沖縄県民の中国帰属感情を刺激するエモい動画を作りました」よりも「ゴミ動画を3時間で100本作りました」のほうが褒められる環境ではないか。そのように推理できる。実際に過去の「五毛」の仕事も、そうしたものだったのだ。
中国企業や大使館にも共通する要素
その結果、実際に沖縄世論を動かすうえではまったく効果がない低クオリティ動画が、大量に生成されるという結果が生まれる。日本の若い女性のショート動画に「琉球の祖国は中国」字幕が重ねられがちな理由も、サムネイルをおっさんにするよりも若い女の子にしたほうがPVを稼げる可能性が高いからだろう。同じパターンや文言の動画が多いのも、そのほうが作るのが楽だからだ。
中国の組織における「上」への忖度やアピールは、ターゲット層に対する訴求効果よりもずっと大事なことがあるのだ。現場で働く人たちとしても、成果それ自体を上げることよりも、「上」に褒められるor機嫌を損ねないことのほうが、インセンティブが大きい。われわれ日本人の感覚としても、お役所やJTCを相手に仕事をした経験がある人なら納得できる話である。
ちなみにこうした傾向は、中国の他の組織でも観察できる。たとえば、日本に進出している中国企業の広告には、日本人の感覚からはしっくりこないキャッチフレーズが使われるケースがすくなくない。
私が聞いた話によると、現場の日本語ができる社員はもっとこなれた表現のキャッチフレーズ(ひらがなやカタカナ語が多い普通の日本語)を作れるのだが、中国語しかできない上司が読めないのでダメ出しをされる。その結果、漢字だらけの変な言葉になってしまうことがあるのだという。
また、昨年11月の高市総理の台湾有事発言以降、中国大使館のXアカウントが、一般の日本人がさっぱり読まないような政治的ポストを大量に流し続けているのだが(結果、それが逆に日本側でネットミームにされて遊ばれている)、こちらも似たようなお役所事情を想像できる。つまり、彼らの目的は日本人に中国のメッセージを伝えることそれ自体ではなく、「そういうポストをたくさんおこなった」という事実を「上」に示すことなのだ。
