「膨大なゴミの山」の恐ろしさ

 もちろん、相手の行動が粗雑であっても、完全に舐めてかかっていいという話ではない。過去、2023年6月の習近平の琉球発言から1年ほど、中国の関係各部門はいつもの忖度ムーブにはしり、さまざまな形で対沖縄工作を繰り広げた。

 当時は(おそらく福建省の地方都市の党宣伝部あたりが出している)沖縄フェイク動画の流布のほかにも、外交部は駐日大使の沖縄訪問や駐福岡総領事の頻繁な沖縄もうでを実行。さらに福建省は党委員会トップの訪沖を実行。インテリジェンス部門は在沖縄華人を動かして沖縄県議などにアプローチをおこなった。

 ほか、琉球独立派の人物を盛んに中国に招待したり、彼らを中国側の報道に登場させたり、学界で琉球・中国交流史やサンフランシスコ平和条約の無効論(=沖縄の地位未確定論)を研究させる動きも活発になった。

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 当時のこれらの動きは、各部門でヨコの連携がほとんどなく、またクオリティが低いものも多かったので効果も出なかった。最大の動機が、沖縄そのものへの働きかけではなく「上への忖度」にあったためだ。だが、とにかく膨大な工作が繰り広げられた。一連の行動が、おおむね2024年夏~秋ごろにある程度は沈静化したことも、すでに書いた通りだ。

 しかし、過去の動きにおける膨大なトライ&エラーのうち、ある程度の効果があると認識された手法は、今回の高市台湾有事発言以降の中国の対日攻撃政策のなかで復活し、活用されている。すなわち党宣伝部傘下の英語メディア『チャイナ・デイリー』などを使った琉球独立派の主張の英語での発信や、沖縄の日本帰属に異議を唱える学説の流布といった動きだ(参考:時事通信「中国、対日カードに「琉球」 官製メディアが沖縄帰属に疑義」2025年11月21日配信)。

2025年11月15日、中国共産党中央宣伝部傘下の国際英文メディア『チャイナ・デイリー』系列のショート動画に登場した、琉球独立活動家のロバート・カジワラ氏。中国メディアの沖縄関連プロパガンダではすでにおなじみの人物だ。

 現場レベルでは行動のターゲット設定すら適当なまま、膨大なゴミの山をまずぶつける。そのなかで使えそうなものを選択し、次に使うときはより戦略的な活用を考えはじめる――。中国の動きは、おおむねそのように説明できるだろう。

 現在、日本の女性のショート動画が粗雑なフェイクに用いられている現象は、そのなかの「ゴミ」の部分であり、それ自体については大した懸念はない。ただ、全体としてはやはり警戒を緩められない。結論としては、そんな話になりそうである。

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