なぜ日本人は世界トップクラスの長寿を誇るのか。その答えの一つが、長く当たり前のように続いてきた「魚を食べる」食文化にある。前編では、日本が陸ではなく海にこそ生存戦略を持つ国であることを見てきた。
後編では、魚食がもたらしてきた健康・寿命という“成果”に焦点を当て、日本人に許された特権ともいえる水産資源の価値を、データとともに読み解く。鹿児島大学教授の佐野雅昭氏の新刊『日本漁業の不都合な真実』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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世界トップクラスの寿命をもたらす魚食文化
少し違う観点から、漁業について考えてみます。魚が健康にいいことは今では世界の常識です。魚介類は必須アミノ酸に富み、栄養価が高く、不飽和脂肪酸を豊富に含んでいます。DHAやEPAなどはLDLコレステロールや中性脂肪を減少させ、動脈硬化や心臓病の予防効果があります。脳の働きを活性化することから、認知症予防にも効果があるといわれ、サプリメントとして売られています。
魚食文化の効果もあるのか、日本人の平均寿命は世界で最長クラスです。WHOが発表した2024年版「世界保健統計」によると、データがある185ヶ国のうち日本人の男女合わせた平均寿命は84.5歳で世界トップ、ベスト10には韓国、ノルウェー、スペイン、アイスランドなど、魚介類を多く食べる国がランクインしています。
他方、畜肉を多く食べるイギリスの平均寿命は80.1歳で27位、アメリカは76.4歳で44位タイ。日本とアメリカでは平均寿命に約8.1歳の開きがあるのです。
日本人は健康寿命が長いことでも知られます。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことで、同じくWHOが公表している健康寿命では日本は73.4歳でシンガポールに次ぐ2位。イギリスは68.6歳で28位タイ、アメリカは63.9歳で71位タイですから、日米の差は10歳近くに開きます。
