史上最悪の少年犯罪と呼ばれる「綾瀬女子高校生コンクリート詰め殺人事件」。事件から11年後の2000年11月、報道番組『ニュースステーション』は、集団強姦に関与し少年院送致となった元少年・Fのインタビューを放送した。激しい賛否を呼んだその放送の舞台裏を、元ディレクター・山﨑裕侍氏の著書『償い 綾瀬女子高校生コンクリート詰め殺人事件 6人の加害少年を追って』より紹介する。

現在も残る監禁現場の前の電柱 著者撮影

久米氏は「ぜひ若い方にはご理解いただきたい」

 VTRでは、カメラに背を向け日陰に座るFの姿が映し出された。余白のある画面で、雨が降り出す中、彼の独白が続く。その後、同じく事件に関わったDの母親のインタビューが続き、最後は被害者の父親の「自分の気持ちは当時と変わらない。加害者に対する感情も変わらない」という言葉が字幕で示された。

 放送では、わかりやすい結論や解説を省き、視聴者一人ひとりに「加害者のその後」について考えてもらう演出に徹した。スタジオで久米宏氏は「罰が重い軽いに関係なく、自分も含めて、家族ももう取り返しのつかないことになってしまうんですよね。それをぜひ若い方にはご理解いただきたい」とコメントした。

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久米宏氏 ©文藝春秋

 番組終了後、400件近くのメールが届き、その大半が「なぜあんな奴らを擁護するような放送をするのか」といった批判だった。しかし山﨑氏は「賛否が分かれる放送は成功」と手応えを感じながらも、遺族の「事件を掘り返してほしくない」という願いに反することになった複雑な思いも抱えていた。

 放送翌日、山﨑氏はFに電話で感想を尋ねた。Fは「だいぶ思っていたよりいい感じだった。妻も『わかりやすかったし、良い形で放送できた』と言っていた。伝えたいことが伝わった」と答えた。

 山﨑氏自身、長女の誕生が事件への向き合い方を変えたという。「自分の子どもがあのような形で命を奪われたらどうするのか」「自分が加害者になってしまったとき、妻子とどう生きていくのか」。単なる「取材したい」という興味から、「取材しなければならない」という使命感に変わったのだ。

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