史上最悪の少年犯罪と呼ばれる「綾瀬女子高校生コンクリート詰め殺人事件」。事件から11年後の2000年11月、報道番組『ニュースステーション』は、集団強姦に関与し少年院送致となった元少年・Fのインタビューを放送した。

 激しい賛否を呼んだその放送の舞台裏を、元ディレクター・山﨑裕侍氏の著書『償い 綾瀬女子高校生コンクリート詰め殺人事件 6人の加害少年を追って』より一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/続きを読む

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賛否が分かれた放送

 11月28日午後9時54分、『ニュースステーション』の放送が始まった。冒頭、参議院で修正された少年法の改正案が衆議院本会議で可決成立したニュースを伝えた。続いて、改正のポイントと賛成派と反対派のそれぞれの声を紹介する。厳罰化だけでなく「被害者の権利」も盛り込まれたが、当事者はこれをどう評価しているのか再び武さん(少年犯罪被害当事者の会代表)にもコメントしてもらった。午後9時58分、特集コーナーが始まる。久米氏の「この彼への公園でのインタビューです」というコメントを合図にVTRがスタートした。

写真はイメージです。 ©AFLO

 VTRはFのインタビューから始まった。公園の芝生でカメラに背を向けて座るF。声だけがクリアに聞こえる。事件のことを話すFは日陰のなかにいる。日差しが降り注ぐ画面奥の広場を小さな子どもと連れ立って歩く妊婦が横切る。光と影。ズームもパンもせず画面に変化のないカットが延々と続き、Fの独白が響く。余白のある画面。途中で雨が降ってきた。傘を差す瞬間もそのまま使った。雨の中、償いについて語るF。途中で、有明高原寮の様子も盛り込んだ。

 続いてDの母親のインタビュー。Fと同じようにカメラは小さな背中を映し出し、母親のつぶやくような言葉が画面から聞こえる。部屋が暗くなり、明かりをつける様子も生かす。最後は、被害者の父親の「自分の気持ちは当時と変わらない。加害者に対する感情も変わらない」という言葉を字幕にした。背景に映っているのは遺棄現場近くにあった杭だ。まるで墓標のように見えた。

 インタビュー中心の構成で、もっともらしい結論やわかりやすい解説は一切省いた。そこから何を感じるかは視聴者に委ねる演出に徹した。「加害者のその後」については、一人ひとりに考えてもらいたかった。わかりやすさばかりを求め、説明しすぎているテレビ番組へのアンチテーゼでもある。