「経営者としての勝負眼を研ぎ澄ませるため、折に触れて読み返したい“参考書”です」。RIZAPグループ・瀬戸健社長が「週刊文春」(2026年1月22日号)でそう綴ったのが、サイバーエージェント・藤田晋会長の著書『勝負眼 「押し引き」を見極める思考と技術』です。大胆な経営戦略でRIZAPを成長させてきた起業家は、発売僅か1カ月半で10万部を突破した注目のビジネス書から何をどのように学んだのでしょうか。『勝負眼』に関する瀬戸氏の書評をお届けします。

RIZAPグループ・瀬戸健社長

「週刊文春」連載開始当初から単行本化されたら読み直そうと決めていたのが、『勝負眼 「押し引き」を見極める思考と技術』(藤田晋 文藝春秋 1700円+税)です。言うまでもなく、藤田さんは24歳でサイバーエージェントを起業し、インターネット広告、アメーバブログ、スマホゲームなど次々に事業を成功させて8000億円企業を作り上げた“ベンチャーのスーパースター”です。

 本書を読んで改めて感じたのが、藤田さんは会社として成功するための仕組みを考え抜き、勝つべくして勝っていること。管理職に「強化指定社員」を選ばせて若手社員の抜擢をシステム化し、かつては「CA8」といって取締役を8名に固定し、2年ごとに2名ずつ交代させるという仕組みも導入……。情が入りやすい人事にルールを導入し、メンバーがやる気を出す→結果が出る→新しいものが生み出されるというサイクルを確立しているのです。『新規事業撤退力を高める』(東洋経済新報社)にも、新規事業の撤退基準のモデルケースとして藤田さんの言葉が引用されていました。

 もう一つは「守り」の強さ。「組織のリーダーとして、むしろ守る場面のほうが多いかもしれない」と書かれているように、藤田さんは危機の芽をつぶしながら、ピンチを守り切り、いざというときに攻める“押し引き”が絶妙なのです。私も起業して20年を超えましたが、成功している経営者は間違いなく、攻めより守りが強いのです。

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 藤田さんは、お会いすると一方的に多くを語るタイプではなく、むしろ人の話に耳を傾けています。そして、私が困っている時には、丁寧なアドバイスをくださいます。chocoZAPを立ち上げ、出店ラッシュの頃「今、こんなにリスクとっているのは●●さんと瀬戸君ぐらいだよ」と言われたことがありました。

話題沸騰中の『勝負眼』

 実は、当社は昨年、出店ペースをスローダウンさせて店舗の品質向上などに力点を置きました。「成長が鈍化した」と言われたこともありましたが、結果として、先日の四半期決算では想定よりもずっと早く大幅な黒字を出すことができました。以前の私だったら、攻めまくっていた場面かもしれません。

 重要なのは押すべき場面で押せるか、引くべき局面で引けるか。経営者としての勝負眼を研ぎ澄ませるため、折に触れて読み返したい“参考書”です。

 それにしても、藤田さんは麻雀を筆頭に音楽、競馬、サッカーと多彩な趣味を持たれています。いろんな視点からビジネスを見られていることも、成功の理由の一つだと感じました。翻って無趣味な自分を反省した年越しでした。

構成・WORDS

(せとたけし 1978年福岡県生まれ。2003年に起業し、多角的な事業展開をするなか、パーソナルトレーニングジムRIZAPが成功を収め、2022年9月コンビニジムchocoZAPをグランドオープン。会員数130万人を超え、2023年度下期に黒字化を達成した。)

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