立命館大学教授で、前日本国駐中国特命全権大使の垂秀夫氏が、現在の日本における外交の問題点や、石破政権の「対中外交」への評価について語った。
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垂氏が考える「日本外交に足りないもの」
いま日本外交に欠けているものは何か――。
この問いは、外務省に40年近く身を置き、中国問題に携わり続け、最終的には北京で日本大使として任に就いた私が、外交官人生の終盤に至って最も強く意識するテーマとなった。
答えを端的に言えば「戦略的思考」である。
戦略とは、善悪の価値判断でも、目先の政策の巧拙でもない。まして、各部局の意見を寄せ集め、「折衝」の末に落としどころを探す作業でもない。戦略とは本来、「国家として何を目指し、どの順序で、どの手段を使い、どう実現するか」という未来の設計図である。
また、戦略とは、個々の外交官の勘や場当たりの「職人芸」を超え、国家として繰り返し運用できる“習慣”でなければならない。危機が起きた瞬間だけ声高に唱えるのではなく、平時から目標と手段を結び、政策の順序を整え、資源配分を決めておく――その地味な作業の積み重ねが、危機の瞬間に国を救う。
この基本が、日本外交から徐々に薄れてきたのではないか。
私がそう案じる理由は、理念的な抽象論ではない。外交の現場で、私はこの「戦略の欠如」の光景を何度も、そして痛切なかたちで見てきたからである。
