「日本人が優勝するには5000年かかる」と言われても

――痩せたらやめようと思っていた世界で、その後は世界大会に挑戦することになりますがどんな心境の変化があったのでしょう。

安井 トレーニングを始めて人生が楽しくなったし、仕事もうまくいくようになって止める選択肢はなかったですね。体ももちろん変わったのですが、それ以上に変化したのが心で、トレーニングを始めてからは「できるかできないかじゃなく、やるかやらないか」だと自分を鼓舞するように変わりました。

――しかし挑んだ世界大会では7年間予選落ちが続きました。

ADVERTISEMENT

安井 最初に世界大会で外国の選手と並んだ時は体型が違い過ぎてショックを受けて、ステージに立っているのが恥ずかしいくらいの差がありました。「日本人が優勝するにはDNAレベルから鍛えて5000年かかる」と言われました。

――それでも辞めようとは思わなかった?

安井 「日本人がダメなんじゃなくて、私がダメなんじゃないか」と何年も悩んで、辞めた方がいいのかなとずっと考えていました。私が日本代表になれば他の人たちのチャンスを奪ってしまう、私じゃなければ世界で通用するのかな、とか。

 

――8年目の大会では、3週間前に足の親指を複雑骨折された状態でも出場したんですよね。

安井 ロッカーから25キロのトレーニング器具を落としてしまい、素足に直撃したんです。救急車で運ばれて即手術と言われたんですけど、それだと半年は動けなくなって大会に出られないので、大会前日の夜にブロック注射を打って、痛み止めを飲んで出場した。日本大会をどうにか優勝して、世界大会ではフィットモデルというカテゴリーで優勝できました。コンディションが最悪の年に最高の結果が出たのは、その時の思いを試練の中から色々なことを学んで人として成長する機会を与えられた。支えてくださる皆様への感謝と協議をやらせていただいた喜びです。まさに「怪我の功名」でした。

プロポーションや骨格は変えられない。でもウエストなら

――そして大会挑戦10年目の40歳の時に、ビキニフィットネスというトップカテゴリーでも世界女王に。

安井 5000年かかると言われたけど、10年で勝つことができました。負け続けた10年間、どうしたら世界と戦えるかを研究していました。プロポーションや骨格は変えられない。外国の選手と比べたら顔も大きいし手足も短い。それならメリハリで勝負しようと思い、ウエストを細くすることに集中していました。

 365日コルセットをつけて、呼吸もウエストを細くするように常に意識。歩いている時もウエストを引き上げながら歩いたり、起きている間も寝ている時もずっとウエストを意識していました。

――具体的にはどのくらい細くなったんですか?

安井 トレーニングをはじめる前は80センチほどだったのが、だんだん細くなっていって、今は50センチです。「世界で一番細い」と言っていただけるようになりました。

――ウエストって30センチも減るんですね。

安井 私の場合は、太っていた20代はもちろん、トレーニングを始めた30歳よりも、35歳の時よりも、40歳を超えてからの方が細くなっています。年を重ねるとあれができなくなる、これもできなくなると、右肩下がりになりがちじゃないですか。でもトレーニングを始めて、毎年体が進化していくのがわかるんです。

――そうなると、やめ時が難しいです。

安井 実は5年前くらいから、大会に出る時は毎年「今年が最後」と思っていました。去年も世界選手権で優勝したらやめようと思っていたし、今年もこれで最後にしようと思っていた。でも、今年の世界選手権が悔しい結果に終わって「このまま終わっちゃっていいのか」と思って、家族会議で「もう1年やらせてください」とお願いしました。家族は「どうせやるって言うと思ってた」という雰囲気もありましたけどね(笑)。

 

――11年目に突入するわけですね。

安井 そのつもりです。年齢は「Age is just a number」だと思ってて、ただの数字で、世界選手権が終わった後、全部やりきったなと思ったらいつでも引退していいと思っています。2025年の世界選手権のあとにその先何ができるかを考えたときに、まだ何かできることがある。やりたいことがある、だからチャレンジするという想いが湧いてきました。

 というのも、世界選手権に出ると右も左も10代の選手で、決勝ステージの半分以上は2000年台の生まれで私はダントツ最年長です。それでも夫は「10代の子たちと優勝争いをしていること自体がみんなの希望になる」と応援してくれて、それも支えにして今日もトレーニングを続けています。

次の記事に続く 夫を置いて東京に7年間単身赴任、一緒の食事はお正月だけ、でも電話は毎日1時間…フィットネス世界一・安井友梨(42)が語る「不思議な夫婦関係」

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。