さまざまな名優たちが演じてきた豊臣秀吉
『太閤記』(1965年)、『黄金の日日』(1978年)の緒形拳や、『秀吉』(1996年)、『軍師官兵衛』(2014年)の竹中直人から、『独眼竜政宗』(1987年)の勝新太郎に至るまで、これまでさまざまな名優たちが大河ドラマにおいて豊臣秀吉を演じてきた。
俳優にとって、豊臣秀吉ほど演じがいのある役柄もそうないのではないか。それこそ竹中直人の『秀吉』の「褌1枚で盗んだ大根をかじる」第1話が鮮烈だったように(そして、2匹の猿のアニメーションから始まった本作第1話冒頭の藤吉郎が畑から盗んだ大根をかじるのは、そのオマージュとも言えるのではないか)、裸一貫でスタートし、やがて『天地人』(2009年)の笹野高史のように絢爛豪華な衣装に身を包み「天下人」としての栄華を誇るが、終盤は『功名が辻』(2006年)の柄本明のように、老いの醜さを曝け出しながら死んでいく(もちろん、花見を通して夢と現を映して華やかに終わった『秀吉』の竹中直人や、主人公たちと語らい布団の上で穏やかに亡くなる『利家とまつ~加賀百万石物語』(2002年)の香川照之もいる)、その人生の波乱万丈さ。
また、妻の寧々(作品によってねね、おねなど呼称は異なる)や、憧れの人・市、彼の後半生において鍵を握る女性・茶々(淀)など、数奇な運命を辿った「戦国時代のヒロイン」たちが彼の人生の各パートを彩っていることも大きい。
近年においては、晩年の秀吉を翻弄する『功名が辻』の永作博美や、『軍師官兵衛』の二階堂ふみ、『真田丸』の竹内結子が、魅力的なファムファタルとなる茶々を演じていたことを思い起こさずにはいられない。
野心家? 好青年? 作品ごとに変わる“秀吉像”
さらに演じる俳優によって、秀吉というキャラクターの多面性も浮き彫りになる。1つは「人たらし」としての一面。これには『秀吉』の竹中直人や『国盗り物語』(1973年)の火野正平、『おんな太閤記』(1981年)の西田敏行、『徳川家康』(1983年)の武田鉄矢といった、演者そのものの個性を反映した秀吉の姿を思い浮かべることができるだろう。
『どうする家康』(2023年)において、松本潤演じる家康の純粋性と対になるかのように、野心に満ちた憎たらしい秀吉を演じたムロツヨシも記憶に新しい。
また、『信長 KING OF ZIPANGU』(1992年)の仲村トオルの圧倒的な爽やかさも、現時点の池松壮亮演じる藤吉郎と同じく、秀吉の「青春期」を描いたものとして心に留めておきたいものがある。

