赤字を垂れ流し、配当もないのに投資家が大注目するワケ

 アストロスケールの事業を簡単にご説明します。現在、宇宙空間はデブリ(使われなくなった衛星などの人工物のゴミ)であふれており、それが非常に危険だという問題があります。

 人工衛星や宇宙ステーションにゴミが衝突すれば、通信障害や機能喪失を引き起こし、取り返しのつかない被害が起きかねません。そうした宇宙ゴミをなんとか回収してきれいにしなければならない――そういう課題意識から事業が生まれています。

 宇宙ゴミは地球のまわりを高速で周回しており、しかも不規則に回転しながら飛んでいるため、捕獲は非常に難しい。アストロスケールが検討する手法のひとつは、追従しながら“ダンスを踊る”ように相手の挙動と合わせ、その後に確実に捕らえて抱え込み、退避軌道へ誘導して大気圏で焼却するというものです。

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 口で説明すると簡単ですが、衛星はものすごいスピードで動いており、実際にはとてつもない技術とノウハウが必要です。興味深いのは、この「後ろから追従して捕まえる」という発想の一部が、東大でのショウジョウバエの研究から着想を得たという話です。生物の運動やトラッキングの知見が、軌道上での近接操作の発想へと結びついた点は非常に示唆的です。

 私としては、岡田社長とアストロスケールの取り組みがぜひ成功し、世界中に驚きを与えてほしいと強く願っています。

 ちなみに、アストロスケールは2024年に上場したばかりの会社で、まだ四季報を見ても財務分析の対象にはならない状況です。たとえば、当期純利益もずっとマイナスです。FCFも毎年100億円近くが流出しています。もちろん、配当があるわけがありません。あまり意味がないのでここでは表も提示しません。

 ところが、すでに時価総額は800億円を超えています。これってすごくないですか?

 割高とか割安とか、そんなレベルの話ではないということです。いかに世界中の投資家がアストロスケール社の技術の事業構想、世界的な社会課題である宇宙ゴミ問題の解決を期待しているかがわかります。そもそも、社会課題の解決という観点からも、「マイナスをゼロ」にしたり、「不幸を解消する」業態は、大きな成長が見込めます。

 たとえば、弁護士や医師が、一般的に高給であることが多いことなどからもわかっていただけるでしょうか。逆に、幸福の度合いを高める業態は、大きな利益につながりづらい側面もあります。

 そういった観点からも、アストロスケールに期待されている社会課題解決は、大きな成長が見込めます。私も大いに同社の成長を期待しているひとりであります。

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