日本国内で深刻な被害をもたらしている特殊詐欺。その一部は、ミャンマーやカンボジアなどに点在する中華系の巨大詐欺拠点、通称「園区」で手がけられている。

 台湾・新北市市議である林秉宥氏は、現地の反政府勢力「カレン民族解放軍(KNLA)」の協力を得て、ミャンマー・カレン州にある「順達園区」への潜入に成功。前編では、園区内部で目にした驚きの光景について証言してくれた。

ミャンマー側の対岸へ渡航する直前の林秉宥。厳密には密航だが、ミャンマーは国家体制が崩壊しているので、現地の軍閥がOKしてくれれば、それはOKということである。

 後編となる今回は、園区のバックグラウンドを深掘りする。中国の裏社会組織が絡んでいるとされる「順達園区」には、詐欺だけではない“隠れた機能”があるというのだが——。(全2回の2回目/前編を読む

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園区から逃げのびた人たちの“その後”

——順達園区には約4000人がいたそうですよね。国籍の割合はどうでしたか?

 大多数は中国人。ただ、流出したデータによると、インド、ネパール、コンゴ、ケニア、ロシアの出身者もいました。この園区については、(園区が壊滅した際にタイ側が把握したデータのなかでは)日本人はいなかった模様です。(数十キロ離れたKK園区など)他の園区にはいたみたいですが。

——順達園区が壊滅した際に、逃げた人たちには台湾人もいたみたいです。

 はい。今回の場合、帰国を希望する者はタイとの国境に送られ、タイ警察が引き取るかどうか判断を待つことになります。そのリストの中に台湾人が十数人。うち5人はタイに渡ることができ、3人ほどは詐欺グループの側について行ってしまった。残り5人は、ミャンマー国軍側の国境警備隊(注:別の軍閥)に身代金目的で監禁されました。

園区内の発電施設。インフラは基本的に劣悪で、タイ国境に園区が多く作られるのも、簡易発電機などを持ち込みやすいためだ。林秉宥のFacebookより。

 この5人の家族から救援を依頼されたので、私に協力している反政府側軍閥のKNLAの友人に本人たちの写真を渡し、この友人が国境警備隊に交渉して、釈放させました。彼らは運がよかったですよ。本当は1人あたり30万台湾ドル(約150万円)の「身代金」と7万バーツの「渡河(密航)費用」がかかるはずが、KNLAの介入で一銭も払わずにタイに出られました。

中国国内の勢力がバックにいる

——園区のバックグラウンドについても掘り下げていきましょうか。カンボジアの園区は、中国と台湾のそれぞれの黒幇(ヘイバン)(マフィア)が絡んでいるようですが、ミャンマーはほとんど中国だとか。

 そうですね。ちなみに、KNLAに対する弾薬の輸出に応じていたのは中国福建省の某メーカーでしたが、そこは習近平とは仲が悪いグループで、すこし前に潰されたようです。詐欺園区のバックに中国国内の勢力がいるのは確実なんですが、園区によって背後にはそれぞれ異なる勢力がついている可能性があります。