詐欺だけじゃない…園区が手がける身代金ビジネス

——昨年10月にアメリカの制裁を受けたカンボジアの園区の元締めの太子集団(プリンス・グループ)の後ろ盾も、私が聞いた話だと人民解放軍、公安、国家安全部、習近平の姉のグループと、いろいろな名前が上がっています。全部が薄く広く関わっていたかもしれませんし、一部だけの関与かもしれませんし、そこは不明ですが。「誰か偉い人が関与している」というのは、園区関係者の共通認識であるようです。

 はい。中国はあまりに巨大なので、国家安全部や公安など、さまざまな部門が園区に関与しているとみられます。私利私欲か、組織的な意図ゆえか、解明するには時間がかかりそうですが。

林秉宥のFacebookより。彼が園区のなかのオフィスで見つけた、詐欺の業績表。エースの「大胖」(デブちゃん)氏はノルマ5万(おそらく人民元立て。約100万円)に対して、約2倍の「9万6000」を売り上げた模様。

——園区のボスの黒幕は、必ずしも中国の中央政府ではなく、高官や「紅二代(ホンアルダイ)(革命功労者の子弟)」だったりするかもしれません。

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 そうですね。事実、詐欺そのものは必ずしも莫大な利益を上げているとは限りません。実際に詐欺園区の業績表を見ましたが、ほとんどの人はノルマを達成できていませんでした。しかし、園区には隠れた別の機能があります。それは猪仔(ヂューザイ)(園区の詐欺従事者)の「身代金の要求」です。台湾人が捕まった際、相手は身代金として「テザー(USDT)」を指定してくるのでピンときたんです。

——テザーは、US$とほぼ等価の仮想通貨ですね。ビットコインと違い値動きが小さいためか、東南アジアのアングラ中華コミュニティでは「共通通貨」と言っていいほど存在感があります。

 はい。人を騙して連れて行き、解放と引き換えに仮想通貨で身代金を支払わせる。本来、犯罪グループがマイニングなどで得た仮想通貨は各国政府の取り締まりで凍結される可能性がある。しかし、自分の子どもが拉致された母親が買って支払った仮想通貨は、履歴もきれいですし、なかなかそうはならない。価値を持つカネになるのです(注:林氏の意見)。

 現在、中国やロシアが行っているマネーロンダリングの大きな手法は、仮想通貨を通じて海外に資金を逃がし、そこで正式な資産(現金や不動産)に変えることです。園区は詐欺それ自体よりも、その過程でマネロンをおこなえる点にこそ価値がある。これは現地に行って実感したことです。

GoogleEarthで確認できた順達園区。 ©︎2024 Google (Airbus)

——ところで、ミャンマーの園区のバックは本当に中国だけなんでしょうか?

 台湾のマフィアは、基本的にはカンボジアのほうにいます。現地の生活環境は、カンボジアのほうがずっといいですから。ただ、台湾系の大物だと張安楽(通称「白狼」。宮崎学の著書で日本でも知られる台湾の大物マフィア)」については、ミャンマーにも強い人脈があるようです。