第1次トランプ政権の国家安全保障担当の大統領副補佐官だったマット・ポッティンジャー氏。文藝春秋の連載「投資家のためのディープな地経学」の最新回で、トランプ政権の新たな軍事戦略について考察しました。その一部を紹介します。(近藤奈香訳)
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「国家安全保障戦略」に覚えた強い違和感
トランプ政権が最近公表した「国家安全保障戦略」は、これまでの同種の文書と同様に、米国大統領の外交政策を形作る内部の議論や対立、矛盾を映し出す内容となっています。
事情に通じた一部の読者は、トランプ大統領の新たな戦略が、依然として中国・北京を主要な戦略的競争相手と位置づけている点に安堵しました。一方で、欧州の同盟国に対しては辛辣な批判を向けながら、いくつかの米国の敵対国には比較的甘い姿勢を取っていることに、危機感を抱く声もあります(今回公表された「国家安全保障戦略」では北朝鮮への言及は一切ありません)。
私は2017年に策定された第一次トランプ政権の「国家安全保障戦略」の執筆者の1人ですが、今回の戦略における台湾に関する記述が、長年にわたる米国の政策と整合している点には勇気づけられました。文書では、「米国は台湾海峡における現状を一方的に変更することを支持しない」と明記されています。そして、「理想的には軍事的優位性を維持することによって、台湾をめぐる紛争を抑止することが優先事項である」と述べられています。
しかし私がこの新たな戦略において最も強い違和感を覚えたのは、モスクワ、北京、イラン、平壌、さらにはその他の好戦的な独裁体制国家のあいだで高まりつつある野心や連携に対し、驚くほど甘い認識が示されている点です。この文書は、独裁者たちが対話によって隣国との和平に応じるかのような、あまりに稚拙な前提に立っています。さらに、これらの国家がすでに、暴力や戦争の威嚇、さらにはその行使を通じて覇権を追求しているにもかかわらず、彼らが地域的な「安定」に甘んじると想定しているのです。

