レイカーズが抱える「歪な構造」
しかし、八村は「トレード候補」として名前が挙がる。
なぜか。端的にいえば、現状のチームのなかで八村に求められる役割と、実際の能力や特性との間にギャップが生じているからだ。
現在のレイカーズには、「ボールを長く持つことで輝くスター」が3人いる。41歳にしていまだ健在のレジェンド、レブロン・ジェームズに加え、昨シーズンには例年MVP候補に名を連ねるルカ・ドンチッチを獲得。さらにドラフト外からの叩き上げであるオースティン・リーブスも、今季はオールスター級の活躍を見せている。
問題は、この3人が揃ってディフェンスに難を抱えていることだ。レブロンは年齢的に守備で体力を温存せざるをえず、守備意識の低いドンチッチはほぼ棒立ちのまま相手に抜かれるシーンも目立つ。リーブスは身体能力の限界から、相手エースに狙われ連続得点を許す場面が見られる。
こうなると、八村に求められる役割はどうなるか。オフェンスでボールに触れる機会はほとんどない。スクリーンでスターたちの壁となり、コートの隅でパスを待つ。そうして、思い出したように与えられたパスを着実に決めていく。
ディフェンスではコートを走り回り、足が止まるスターの穴を埋め、リバウンドやルーズボール争いに奮闘する。そのように、「スターにとって都合のいい汚れ役」を期待されることになる。
「聖域」の裏でスケープゴートにされる八村
しかし元来、八村はそうした汚れ仕事を得意とするプレイヤーではない。たしかに「一対一のディフェンス」では輝きを見せることもある。一方で、チーム全体での連携が必要となるディフェンスローテーションの動きに関しては、ドラフト当時から弱点として挙げられており、現在でも厳しい評価が下されている。
スポーツ・イラストレイテッド誌のメディアグループに属する「Fadeaway World」は、チームの、そしてNBAのスーパースターであるレブロンやドンチッチが守備での運動量をセーブするなか、八村も機動力のあるスコアラーを抑えられず、チーム全体としてペリメーター(3ポイントライン周辺)の守備が崩壊していると指摘する。
このように、八村は歪なチーム構成のなかで苦手な横の動きや複雑な判断を強いられ、チームのディフェンスがボロボロの日には「ルイをトレードしてディフェンスに優れた選手を獲得すべきだ」といった声がネット上にあふれていく。
こうした「ロールプレイヤーへの厳しい批判」は、スーパースターを擁する都会チームの宿命でもある。スターが「聖域」となる一方で、脇役たちはその輝きを支える黒子と見なされ、機能不全に陥ったときは真っ先にスケープゴートにされてしまうのだ。