「扱いやすい金額」があらぬ噂を招く
しかしこうした批判とは裏腹に、八村がチームの勝利に欠かせない存在であることは、データからも明らかだ。
今シーズン、八村が欠場した試合のレイカーズは4勝6敗だが、出場した試合は21勝10敗。さらに、八村のフィールドゴール(フリースロー以外のシュート)試投数が10本以上の場合に限定すると、13勝3敗と圧倒的な勝率を残しているのである(日本時間1月22日時点)。
八村の活躍が勝利に直結することを示す数字だが、それでも八村がトレード候補に挙がる最大の理由は、きわめてドライな「お金」の問題にある。NBAにはチーム内の年俸総額に上限を設ける「サラリーキャップ」があり、トレードにおいては基本的に、双方のチームが交換する選手の年俸総額をほぼ同等にする必要がある。
たとえばレイカーズが現状を打破するために、他チームから主力級となる年俸30億円~40億円の選手を獲得しようとすれば、こちらも同等の金額の選手を差し出さなければならない。
レイカーズとしては契約額に対して出場機会の少ないゲイブ・ヴィンセントやマキシ・クリーバーといった選手を駒としたいが、活躍できていない選手を欲するチームはほとんどない。
高額契約を結ぶレブロンにはトレード拒否権があり、同じく高給取りのドンチッチは今年のオールスター投票で全体1位の人気を誇る。どちらも放出は考えにくい。
そこで、年俸約27億円(1700万ドル)という動かしやすい額であり、かつ戦力として一定の需要も見込める八村が、金額合わせの調整弁となってしまうのだ。
ビジネス要因だけはない八村を取り巻く喧騒
ここまで見たように、八村の実力に疑いはないが、レイカーズの歪なチーム構成と、サラリー制度のしわ寄せが「八村放出論」として表出している現状がある。
ただ、八村を取り巻く喧騒は、こうしたビジネス的な要因だけで片付けられるものではない。現地ファンが八村に向ける視線のなかには、彼のプレイスタイルそのものに対する、より感情的で辛辣な評価も混在している。
後編では、「彼はコートで有酸素運動をしている」とまで揶揄される現地評価の正体と、そこから見えてくる八村塁というプレイヤーの「真の価値」について掘り下げていきたい。
