NBAのシーズンが中盤に差し掛かり、八村塁が所属するロサンゼルス・レイカーズ周辺がにわかに騒がしくなっている。その喧騒の中心にいるのは、ほかでもない八村だ。

  NBAでは毎年2月に「トレードデッドライン(移籍期限)」が設けられ、この付近で各チームの動きが活性化する。これにともない、現地メディアでは数々の予想記事が飛び交うが、八村はそこでしばしば「交換要員」として名前を挙げられているのである。

 一体なぜ、八村をめぐるトレードの噂は尽きないのか。

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八村塁 ©時事通信社

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八村塁の特異な立ち位置

 そもそも、八村が一部で「トレードの駒」と見なされていることは、八村の実力不足を意味しているのだろうか。

 決してそんなことはない。

 むしろ、八村はNBAのなかでも貴重な「フィジカルの強いシューター」として地位を確立している。バスケットボールにおいて、屈強なフィジカルと繊細なシュートタッチはしばしば相反する要素となるが、八村はこの2つをNBAでも高い次元で両立する稀有な存在なのだ。

 とくにレイカーズ移籍後の進歩は目覚ましく、役割の変化に応じて3ポイントシュートを磨き上げ、2023-24シーズン以降は成功率4割以上を安定して記録。「成功率4割」といえば、NBAにおいても一流シューターの証となる数字である。

 八村の類まれなシュート能力について、レイカーズの指揮官であるJ・J・レディックは「彼は我々のベストなキャッチアンドシュート・ガイ(パスを受けてそのままシュートを決める選手)」であり、「リーグでも最高峰の一人」と賞賛する。

サイズの大きなプレイヤーとのマッチアップ

 一方、フィジカルの強さについては、主にディフェンスにおいて「サイズの大きなプレイヤーとのマッチアップ」で輝きを見せる。2023年のプレイオフでは、世界最高のプレイヤーとも評されるナゲッツのセンター、ニコラ・ヨキッチと対峙し、20kg以上の体重差のなか容易にポジションを取らせず苦戦を強いた。

 ニューヨーク・タイムズのスポーツジャーナリズム部門「The Athletic」は当時、八村がヨキッチ以前にもオールスター級のビッグマンを相手に巧みに守ってきたことに触れ、「幅広の骨格や、力強さ、そして体格に勝る選手に対する低い重心は、彼を効果的なポストディフェンダーにしている」と評価している。

 今シーズンの序盤にも、224cmの長身にして多彩な得点パターンを有するヴィクター・ウェンバンヤマを相手に好守を見せ、勝負所ではオフェンシブ・ファウルを引き出し退場に追い込んだ。

 リーグ全体で見ても、ヨキッチやウェンバンヤマといった最高峰のビッグマンとマッチアップでき、かつ3ポイントを4割以上決められるプレイヤーは皆無に等しい。