「動じないメンタル」という稀有な能力

 実際に八村のプレイを見ていても、やはり「地味な仕事で安定してチームに貢献するタイプ」というよりは、「短期決戦で瞬発的に輝くタイプ」であるように映る。それを裏付けるのが、八村の特異なメンタリティだ。

 ある種「執着心が薄い」ようにも見える八村の姿勢は、「長時間ボールを触っていなくても淡々とシュートを決められる」という稀有な能力と、実は表裏一体であるように思えるのである。

 現役時代に自身も優れたシューターであった指揮官のJ・J・レディックは、八村が「試合時間で8分、実際の時間では30分もボールに触れない状態で、いきなり3ポイントを沈められるのは驚くべきことだ」と評している。

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写真はイメージ ©︎AFLO

 NBAで自身初となるブザービーターを決めた12月4日のトロント・ラプターズ戦も、そうした特異なメンタリティが発揮された試合だろう。

 この試合、レブロン・ジェームズは自身の持つ「連続2桁得点記録」が途切れる危機に瀕していた。2007年、初代iPhoneが発売される前から続くリーグ最長記録である。しかし同点で迎えた試合終了間際、それまで8得点に終わっていたレブロンは自身の記録を捨て、フリーになった八村へラストパスを送った。

 並の神経なら手が震えるようなプレッシャーのなか、八村は平然とボールを受け取り、ブザービーターを沈めてみせた。このように、レジェンドのキャリア最終盤を飾る歴史的シュートを決めた八村の「動じない力」こそ、選手としての最大のアイデンティティなのではないか。

八村がフィットする環境は

 日本人として海を渡り、ロサンゼルスの騒がしいメディアやファンに囲まれながら、レブロンやドンチッチの圧を受け流して飄々とプレイする八村。その胆力は、今後のキャリアにおいても活きる場面があるように思う。

 とくにプレイオフでは、チーム全体の調子が上がらず、ドツボにハマるような試合展開が必ずやってくる。そのときに、周囲の空気に引きずられない八村のシュートが、チームの流れを変えることもあるかもしれない。

 バスケットボールは「関係」のスポーツだ。実力のある選手同士が噛み合わず、期待外れな結果を残すこともあれば、それまで評価されていなかった選手がチームのなかで特殊な役割を見出し、替えのきかない存在になることもある。おそらく八村にも、ピタリとはまる環境があるはずである。

 それを見つけられるかどうかは、偶然の巡り合わせと、本人の適応、どちらの要素も必要だ。今回のトレードデッドライン、あるいは今オフのフリーエージェントの際、八村がどのチームに所属することになるかはわからない。日本にいるファンとしては彼が、さらなる高みで輝く姿を見たいものである。

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