しかし現実問題として、リバウンドやルーズボールに対する俊敏な反応は、意識の問題よりも反射神経や瞬発的な筋力、また経験的な勘にもとづくポジショニングなど、きわめて複合的な要素によって成り立つものだ。
たとえばレイカーズの戦術分析に特化したポッドキャスト「Laker Film Room」では、八村のボールに対する反応が緩慢に見えるのは、決して彼が怠慢(lack of effort)だからではなく、「情報を処理して身体を動かすまでの時間(Processing Speed)が長い」ことに由来するものと分析している。
フィジカルやシュートタッチが「天性の才能」であるように、泥臭い仕事への適性もまた、一種の才能である。八村に対して「苦手な分野での急激な成長」を求めるのは、「あの選手の身長があと10cm高ければ」と惜しむのと、さしたる違いはないのかもしれない。
ハマリ役は「仕事人」ではなく「起爆剤」か
八村が苦手とするリバウンドやルーズボール争いは「勝利を呼び寄せるプレイ」として高く評価され、実際に歴代の優勝チームには必ずといっていいほど汚れ仕事に秀でた名脇役がいる。
サンダーのアレックス・カルーソに、セルティックスのデリック・ホワイト、ナゲッツのアーロン・ゴードン……。主役を邪魔せず相手エースを抑え、ヘルプディフェンスに駆け回り、重要な局面でボールを相手から奪うその献身的な姿は、複数のスターを抱えるレイカーズのファンの目に「理想のロールプレイヤー」として映る。要するに八村は、このようなプレイヤーとなることを期待されているのである。
しかしおそらく、八村が今後優勝を争うチームの中核を担うとしたら、その役割はこうした「名脇役」とは異なるものになるように思えてならない。
近年の優勝チームの主力にも、「ディフェンスが不得手」「プレイに一貫性がない」などと批判されるプレイヤーはいた。たとえば元ナゲッツのマイケル・ポーターJr.や、元ウォリアーズのジョーダン・プールなどは、「ディフェンスが苦手で、オフェンスでも3番手~4番手」というプレイヤーである。エースを支える理想的な脇役像とはかけ離れた選手だったが、ともに優勝になくてはならない存在だった。
共通しているのは「ハマったときの得点力」である。4戦先勝となる短期決戦のプレイオフにおいては、「エース級ではないプレイヤーが20点~30点を挙げ1勝をもぎ取る」といった展開がシリーズの行方を決定づけることがある。