中国から若い女性たちが出稼ぎ目的で来日し、短期間で大金を稼いで本国へ戻る。“東アジア労働移動”の縮図が、そのまま上野の一室で繰り返された。求人は非公開、紹介制、SNSやチャットアプリでの斡旋が主流で、上野駅前の雑居ビルに張られた外国語で書かれた求人ビラがその実態を示していた。

 6年ほど前、警察はついにこの建物内の違法営業を一斉摘発。それを機に看板は撤去され、ビルは外見上正常化した。

 だが、エステ店は周辺のより小規模な雑居ビルへと場所を移し、しぶとく生き残る形で散在、サービスもかえって過激化している。

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潜入取材が映したビルの現在

 外観だけみれば、いたって普通のテナントビルとなった“上野の九龍城”。一階にはチェーン飲食店が入り、入り口はオートロックが整備され、ネット上には「SOHO可」「スタートアップ向け」といった賃貸物件用の宣伝が並ぶ。ただ、一歩ビルに足を踏み入れれば、以前の状況が想像できるような痕跡は確かに残る。

写真はイメージ ©︎AFLO

 廊下の壁には「大小便禁止」「風俗業禁止」といった注意書き。書かれた言葉も日本語・英語・中国語・韓国語が並ぶだけでなく、言葉がわからなくても大丈夫なようにということか、ていねいにイラストにまで描かれている。非常階段には無造作に荷物が積み上げられ、通路もゴミだらけでいつ清掃が入ったのかも不明である。吹き抜けも薄暗くて淀んだ空気がこもっているようだ――正常化したとはいっても、数百室の雑居ビルの荒廃は隠しきれない。現在営業中の店舗も二桁ほどはある。名義上はリラクゼーション・マッサージだが、非本番系が主流でスタッフにも日本人名が並んでいる。摘発以降は一時の過激さはすっかり影を潜め、看板も広告もクリーンになってHPからも“中国”の文字は消えた。ただ、稼働実態は依然として灰色だ。「とはいえサービスのなかでも“本番”を匂わせるようなものはまるでないし、“追加のサービス”を別料金でというお誘いもありません」と本橋氏は語る。

「このビルの店は本番なし。だから警察が来ても大丈夫」という話さえあったというが、確かに“非本番”であれば合法で、彼女たちのビジネスは逆に警察が守ってくれる。上野警察署の目と鼻の先にある“上野九龍城”が合法的に生き残っているのは当然といえる。