2度の結婚と離婚を経て、3度目の結婚を前に、姓の変更をめぐる理不尽に直面した漫画家・鳥飼茜さん。改姓のたびに発生する煩雑な手続きに、氏の変更にまつわるある作業を放置していたところ、まさかの法律の改正が壁となり立ちはだかったのだ。

「選択的夫婦別姓」制度が実現してくれていれば、こんなことにはならなかったのに……。姓に翻弄される半生と結婚の傘のもとでの男女の力学が綴られたエッセイ『今世紀最大の理不尽 それでも、結婚がしたかった』の冒頭部分をお届けします。

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私の身に起きた眩暈のしそうな理不尽と世にも奇妙な選択

 選択的夫婦別姓。

 結婚して苗字を一緒にしてもしなくてもいい。こんなに八方丸く全員得なルールを、始めるか始めないか議論されてから、どのくらいの月日が経っただろうか。

 私自身、結婚と離婚を2回し、その2回とも苗字を夫のものに変えた経緯があるので、いま現在結婚したい人が選べるのが、カップルのどちらかに苗字を統一する法律婚と、苗字を別々のまま夫婦と自称する事実婚のどちらかしかない現実は当然目の当たりにしてきた。

 事実婚は配偶者控除が受けられなかったり、相続権がないという、金銭的に不利な面があるほか、いざ配偶者の緊急事態という時には夫婦と扱われないシチュエーションが残されていると聞く。とはいえ別姓可能になる法律の変更はなかなか進まない。よその夫婦に好んで別姓婚されるとどうしても都合が悪いっていう人々の様々な意見があるらしい。選択的って言ってんだから人がどうしようと勝手だろうが、というこれ以上ないほどシンプルな理論が通らないことも、日本には他にも堕胎罪とか意味がわからない法律がいまだに健在なのも、もう全部賢い人たちが一通り語り尽くしただろうし、私としてもこの期に及んで革新的な論理を見出したわけではない。

 人の勝手でしかないことを、なぜか国とか知らん人間の集合体が、ああせいこうせいと決めつけてくる。それにはもう飽きたというか、政治の力で私の希望が叶うなんてことはとうの昔に諦めている。

 これから私が始めたいのは、選択的夫婦別姓を積極的に論じるとか余裕のある話ではなく、この数日に起こった眩暈(めまい)のしそうな理不尽と、そこから導くしかなかった世にも奇怪な私の人生の選択について、です。

鳥飼茜さん