義母と義妹への強制わいせつ、虚偽の告白で家族を犯罪に巻き込み、通電で支配する――。《北九州監禁殺人事件》で犯人の男は、金と罪悪感、そして家族関係そのものを利用し、人々を逃げ場のない地獄へと追い込んだ。なぜ彼の洗脳は、ここまで完全に機能してしまったのか。その異常な支配の内側を、文庫『世界の殺人カップル』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全4回の3回目/続きを読む

内縁の妻であった緒方純子受刑者(1983年撮影/写真提供:小野一光)

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衝撃のマインドコントロール手法

 Bさんが死亡すると、松永は緒方の母親に仕送りをさせ生活していた。が、その金額が1500万円を超えたところで限界に達する。それでも、執拗に金を要求され虐待を受けていた緒方は1997年4月に突如、行方をくらます。自分で働き送金しようと、由布院温泉(大分県)のスナックに勤めることにしたのだ。

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 しかし、行き先を告げぬまま逃亡した緒方に松永は怒り狂い、彼女の両親に娘が殺人に関与していることを告げると同時に、家族から殺人犯が出ることの世間体の悪さを説き、緒方の父親(死亡時61歳)と母親(同58歳)、妹(同33歳)を北九州市内のマンションに呼び出す。

 そこで、自身の死亡を偽り、緒方をおびき寄せることへの協力を強要。ほどなく、子供のことが心配で電話をかけてきた緒方に松永が自殺したと嘘をつかせ、驚いた彼女が葬儀に駆けつけたところで、松永に命令されていた家族が緒方を取り押さえた。

 松永は殺人犯である緒方を匿うという名目で家族に毎月多額の金銭を要求、それが目標額に達しなかった場合は、彼らに容赦なく通電の罰を与えた。こうして、身内が殺人に加担した後ろめたさを持っていた家族は数千万円を奪われ、否応無しに松永の支配下に置かれる。