「歓声や拍手をたくさんいただきました。ありがたいことでしたし、現役力士として幸せな人生だったなと思います。特に勝った後の、あの歓声は今でも鮮明に覚えています。生涯忘れることはありません」
昨年11月、およそ12年半の現役生活にピリオドを打った、元小結・遠藤の北陣親方。現在の相撲ブームの礎を築いた立役者の人気は、晩年でも衰えることはなかった。その一方で、両膝、両足首など、全身に怪我を抱え、満身創痍で戦い続けた土俵人生でもあった。
「土俵に上がれるかどうか、相撲を取れるかどうかと、ずっと抱えていた不安な気持ちはなくなり、ほっとした気持ちです。それと同時にたくさんの方々に支えられて現役生活を過ごしてきたことに、まずは改めて感謝したいです。『お疲れさま。ありがとう』とお声がけいただくことも多く、ありがたくてたまりません」
「土俵の外からすでに闘いが始まっている」
日本大学を経て幕下付け出しでデビューした2013年は、相次ぐ不祥事により相撲人気に陰りが見えていた時期。逆風の最中に光となったのが、4場所目に新入幕を果たした遠藤(当時)だった。確かな実力に端正なルックスも相まって“遠藤フィーバー”を巻き起こし、国技館には“顔はめパネル”が作られるほどだった。だが北陣親方は当時、まだ22歳。フィーバーを重荷に感じなかったのか。
「そのように感じていた時期もあったかもしれません。でもそれ以上にたくさんの声援をいただきました。やっぱり『幸せ』という一言以外で例えられませんよね」
高い人気を誇る一方で、度重なる怪我の影響で番付は一進一退だった。周囲からは様々な雑音もあったが、ひたすら土俵に向かい続けた。

