森下 康宏君はどうですか?

増田 僕は基本的なことを知っている程度で、すごい知識があるわけではないです。序盤の定跡量としてみたら、平均より下だと思います。むしろ記憶に脳を使用すると中終盤が弱くなってしまうので。

才能か努力か

増田 将棋界全体に持って生まれた能力が重視される傾向がありますよね。僕も昔はそう思っていたのですが、最近は努力が大きいと感じます。

ADVERTISEMENT

森下 やはり私は持って生まれたものってあると思うんですよ。最初の弟子を取る前後の時期に、同世代のある棋士に、「幼くして将棋を覚えて、いい先生について、両親や周りに理解があればどんな子でも強くなる」と話したんです。すると彼は「違うと思う」と。ずいぶん多くの子を見てきたけど、まずは才能だと言うんです。

増田 子供の頃はそうなんですけど、僕が言っているのはプロになってからです。けっこう努力の差で結果が変わる気がするんです。どれくらい伸ばせるかという能力が。

 

森下 なるほど。

増田 棋士になる前も後も、持っている能力が一番大事みたいな考え方の人が多い。藤井さんは持って生まれた能力が高いから勝つみたいな。それは間違っていると思うんです。

森下 将棋の努力は、AIがない時代にはまずは実戦でした。あとは棋譜を並べる。そして詰将棋、必至問題、次の一手をとことん解く。この三つしかなかったわけです。おそらく江戸時代からずっときているわけなんです。

増田 そうですね。

森下 今はAIが現れて全然違う次元があるわけですが、変化を解析できても、それで将棋自体が強くなっているのか自分にはわからない。昔、米長先生に長編詰将棋を解かなければダメだと言われて随分解いたんですけど、途中から合理性がないと思えてやめてしまったんです。

増田 そうなんじゃないですか。

森下 ただ羽生さんとかは長編をたくさん解いているんです。自分は合理性がないと思ったんですけど、じっくり考えることでしかつかない力があるんじゃないか。これはコンプレックスなのだろうか。

増田 いや、先生が正しかったんじゃないですか。読む力は他の要素でもつけられるので、その方がいいと思います。

森下 ただ、長編を解くことが伝説になったんですよ、羽生さん、森内(俊之)さん、佐藤(康光)さんもやっているからと。藤井君もやっている。でも、もっと合理的な勉強法があるということになりますかね。

写真=野澤亘伸

この記事を応援したい方は上の駒をクリック 。

次の記事に続く 「え! またやり始めたの?」藤井聡太に挑戦する28歳棋士、師匠を驚愕させた“超アナログな練習方法”とは

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。