夫妻が暮らしていた部屋には、常に鼻を突く異臭が漂っていた。冷蔵庫に隠されていたのは、人間の肉片と“保存食”の数々。近隣住民や職場の誰もが異変に気づきながら、止められなかった狂気の日常はどこまで続いていたのか。
事件発覚後に明らかになった「人喰い夫婦」の実態と、その結末を追う。文庫『世界の殺人カップル』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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常に異臭が漂っていた「殺人カップルの部屋」
2人はナタリアが勤務する士官学校の寮で同居しており、彼らの部屋からは常に異臭が漂っていたそうだ。
学校スタッフが中を確認しようとすると、ナタリアは血相を変え彼らを門前払いにしたばかりか、学校の生徒にも人肉を混ぜた食事を出していたというから驚く。
こうして彼らの犠牲になったのは、2017年までに少なくとも30人以上にのぼると言われる。この間、2人は2013年に結婚。ナタリアが主でドミトリーが従の関係だった。年齢差もさることながら彼女は荒々しく支配的な性格で、ドミトリーを公衆の面前で罵倒することも常茶飯事。自然、犯行もナタリアが指示役で、ドミトリーが殺害の実行役を担っていた。
2017年9月8日、バクシェーエフ夫妻は近所に住む顔見知りのエレナ・ヴァフルシェワ(同35歳)を誘い、彼らの自宅近くの廃屋で酒盛りを始めた。酔いも回ってきたころ、エレナがドミトリーの側に座り親密そうに何かを囁いている。嬉しそうに反応するドミトリー。
その様子に嫉妬を覚えたナタリアの怒りが爆発し、勢いのままドミトリーに殺害を指示。彼はためらうことなくバッグに入れていたナイフでエレナの胸を2回突き刺し殺害する。
その後、頭部を切断、皮を剥がしたうえ、手首もバラバラにし一部を自宅に保管、残りを近くの森に投棄した。
ドミトリーがスマホを落とすのは3日後の同月11日。
