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2018/08/21

画像診断にAIを

 したがって、画像診断にAI(人工知能)を導入する研究を早急に進めるべきだと私は思います。欧米では、AIによる脳梗塞や皮膚がん、乳がんなどの画像診断システムの開発が進んでいます。すでに実用化の段階に入りつつあり、いずれもベテランの専門医を凌ぐ診断精度を出しているそうです(MAG2NEWS「医学界が震撼。がんや脳梗塞を迅速に発見できる画期的な診断法」『ドクター徳田安春の最新健康医学』2018年7月31日)。

 そもそもAIは、大量の画像を読み込んで自己学習(deep learning)を行い、パターン認識を獲得することが得意だと言われています。大量のデータが蓄積されている胸部X線画像の読影も、AIならきっとすぐに習得してしまうはずです。先日、私が取材した放射線科医も、「AIによる画像診断が普及する日が待ち遠しい」と話していました。

 肺がんだけでなく、胃がん、乳がんなどX線を使う検診の画像も含め、すべてAIが見るようにすれば、人間より圧倒的に早い時間で処理できてしまうでしょう。そして、AIが「異常あり」と抽出したものだけを専門医がダブルチェックすれば、現在より大幅に手間も人手も減らせるはずです。もちろん、これによって見逃しが減るのかどうか検証は必要ですが、検診精度が上がれば「見逃された」と悔しい思いをする人も減るでしょう。

胸部X線による肺がんの集団検診をやめよう

 もう一つの方向性としては、いさぎよく胸部X線による肺がんの集団検診をやめてしまうことです。その代わり、肺がんリスクの高い喫煙者に限って、より検出率が高いCTによる肺がん検診を勧める考えはありだと思います。

 ただし、喫煙者に限定してCT検診の有効性を確かめる臨床研究が欧米で行われましたが、CT検診を受けたほうが肺がん死亡率は下がったという研究と、CT検診を受けたほうが死亡率は高い傾向にあったとする研究があり、有効性の評価はまだ定まっていません。

©iStock.com

 国も肺がんのCT検診は「死亡率減少の有無を判断する証拠が不十分」として、自治体などで行う集団検診(対策型検診)としては推奨していません。ですから、国内でも信頼性の高い方法(検診群と非検診群に分けたランダム化比較試験)で死亡率減少効果を検証してから、推奨すべきかどうか決めるべきだと思います。

 いずれにせよ、効果が定かでない肺がんの胸部X線検診を漫然と続けるべき時代ではないと私は思います。今回の「見逃し」問題をきっかけに、多くの人ががん検診の諸問題に気づき、科学的な根拠に基づいた議論が進むことを願っています。

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