政府が旗を振る「ソサエティー5.0」とは何か? サントリーホールディングス社長であり、日本経済の指針を議論する経済財政諮問会議メンバーでもある新浪剛史氏が考える日本経済の未来地図。
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デジタル化でリストラされた人材をどのように活用していくのか
――日本経済の司令塔である経済財政諮問会議では今、何が問題とされ、日本経済をどのように変革しようとしているのでしょうか。
新浪 1つは社会保障改革をどのようにしていくかということ。もう1つは、デジタル化を中心とした第4次産業革命を通して「ソサエティー5.0」をどうやって社会実装していくのか。その2つのテーマを中心に議論されています。
社会保障改革については、未病、重症化予防を含め、IT技術やデータを使いながら「病気になりづらい社会」をつくっていく。最終的に医療費のコストを下げていく施策を進めているのです。今手を付けなければ、高齢化に伴う将来の医療費の増加を抑え切れなくなります。これからはゲノム解析や新たなデータヘルス改革で、病気を予防する方向に社会を変えていく必要があるのです。
こうした社会的な問題を解決するためにも、新しい産業を成長させなければなりません。デジタル技術を社会の課題解決にどのように活用していくのか。そして、いかに「ソサエティー5.0」を実現していくのか。それが今後の大きなポイントになるでしょう。
――デジタル化についても、多くの企業が今意識的に取り組んでいます。
新浪 人材不足をデジタル化でどうカバーするのかということがある一方で、AIなどによって人がいらなくなる分野も出てきています。例えば、フィンテック(Fintech=金融とITの融合)です。今メガバンクでは3万人規模のリストラが進んでいるように、IT技術が人間にとってかわる時代が近づいています。金融業界では、余分な人的コストを抑制しなければ、マイナス金利とグローバルな金融戦争には勝てないと考えています。メガバンクも本当はもっと人を減らさなくてはならないでしょう。また、国としても、ここで出てきた人財が有望な中小企業に再就職できる仕組みを作るべきでしょう。
今後、こうしたリストラは各業界で進んでいくでしょう。そのとき、何らかのセーフーティネットを設けることによって、いい人材をもっと横に拡げていくことが必要です。例えば、中小企業にいい人材が行けば、日本はもっと活性化する。これからは中小企業の活性化も大きなポイントになると思います。
クロスボーダーで成功する日本企業の事例をつくる
――政府の施策については、どのようなことを期待されますか。
新浪 まずは社会保障問題を解決して、安倍政権のレガシーとして残してほしいですね。また、もっと外国人を活用できる社会をつくってほしい。地方にしても農業にしても、ほとんどの産業で海外からの人材に頼らざるを得ない状況となっています。だからこそ、彼らを受け入れる仕組みをつくらなければならない。もっと言えば、ダイバーシティを受け入れられる素地をいかにつくるか。そしてただの労働力としてとらえるのではなく、同一労働同一賃金を基本に、それぞれのコミュニティーと共生して活躍してもらう社会を作っていくことが必要です。