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デジタル化でリストラされた人をどうするか 新浪剛史が語る「日本経済の現在地」

新浪剛史が語る「経済外交」と「日本経済」#5

2018/08/22
note

――新浪さん自身は、今後経済外交にどのように携わっていきたいとお考えですか。

新浪 これからはクロスボーダーで成功できる日本企業がもっと出てくるべきだと考えています。異文化の外国企業を買収して、一緒にビジネスしていくことを、日本企業は苦手としています。過去にも大きな企業買収でいくつもの失敗を重ねてきました。その意味でも、私はサントリーが買収したビームの案件を成功させて、日本企業でも海外の大企業を買収して成長ができるということを示していきたい。

 私はビジネスマンです。だからこそ、まず日本企業が苦手としてきたことを克服して、自分の手で成功事例をつくっていきたい。それが日本企業のグローバル化の一つの試金石になるでしょう。その結果として、海外の人が日本企業に投資してもらってよかった、社員として安心して働ける、そう思ってくれることが、最終的に経済外交につながっていくと思っています。

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首相官邸HPより

若い人たちにどんどん世代交代をすべき

――経済外交という観点から、日本はアメリカや中国とどのように付き合っていけばいいとお考えでしょうか。

©鈴木七絵/文藝春秋

新浪 中国との関係づくりが一番難しいでしょう。でも、付き合っていかなければならない。リスクを恐れず、今後も中国への投資は継続して行っていくべきだと思います。

 日本が中国と対等に付き合っていくには、焦点を絞って、日本しかできない技術革新を重ねて行く必要があります。技術立国としての強みを常に保つことが重要なのです。米中ともに、日本の技術やもの作りのノウハウがなければ、自国の産業が成り立たないようなポジショニングを目指すべきです。もちろん日本のメーカーはこれまでもそうやってきましたが、さらに先に進化させるのです。

 イノベーションは現場主義の改善と向上の中から生まれます。これをやり遂げる忍耐、文化を持っていることが日本の強みです。同時に海外に出ても、現地でモノづくりをしながら、現地の人財を育成していく。中国には14億人、さらにASEANには7億人の人々がいます。そこに日本のノウハウを投入していくことが大事なのです。

――そのためにも日本は何を変えなければならないのでしょうか。

新浪 若い人たちにどんどん激しく世代交代していくことでしょう。年齢の高い人たちは若い人たちのメンターとなってアドバイスを送る。その代わり、年齢の高い人には、ある程度の給料を保障してあげることも必要でしょう。

 ある意味で、日本は運命共同体のようなものなのです。アメリカのCEOの給料は非常に高いが、日本のそれは低い。しかし、それでも周りがハッピーなら、いいじゃないかということです。米国のような高い給料を目指すのではなく、参加者に対して広く分配をする。その中で、若返りを進めて新しい技術的な課題を克服していく。そうしたことが今後日本においては、重要になってくると思います。また若い世代は終職ではなく他に良いチャンスがあればそれをモノにしていける。また人財の流動性が高まり、会社では良い人財には厚く、そうでない人財には厳しい現実がある、そういう社会で若い人財が育っていくのでしょう。

取材・構成=國貞文隆

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