高市政権の現在の経済政策をどのように評価するか。BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏、東京大学大学院教授の松尾豊氏、慶應義塾大学教授の伊藤由希子氏、みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏の4氏が語り合った。
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企業の新陳代謝を損ねる方向に行きかねない
河野 高市政権が2026年度予算の目玉に据えた「重点投資対象17分野」について議論しましょう。AI・半導体、造船、量子、合成生物学・バイオ、航空・宇宙、コンテンツなど、日本の成長を牽引すると考えられる分野に予算を積極的に投じる成長戦略です。国際環境の変化によって、グローバルなサプライチェーンの構築が難しくなっていますから、信用できる国々との間で、重要な産業の「内製化」を進めることには賛成ですが、私がまず思ったのは、17は多いな、ということです(笑)。
松尾 同感です。しかも合計で約20兆円規模の巨額の予算が充てられましたから、かなり工夫して使わないと、企業の新陳代謝を損ねる方向に行きかねません。私は内閣府のAI戦略会議の座長を務めていますが、岸田文雄政権でも石破茂政権でも、スタートアップへの支援が既成産業に流れてしまう懸念が常にありました。成長が期待されるところにきちんと効率的にお金を送り届けるための仕組みを同時に構築することがとても大事です。
河野 既成産業に予算を投じることになれば、今後出現しうる成長企業の芽を摘んでしまうことになりかねませんからね。国から渡されたお金を真面目に研究開発に使えば大丈夫と考える人が多いでしょうが、既存企業を優遇することは、結果的に新規参入者を不利にするということになります。ただ、新規企業の誕生を邪魔したという弊害は見えづらい。予算をつけると、成長戦略という名の反成長戦略になるリスクがある点を意識する必要があります。


