伊藤 予算歳出に対して、具体的な目的と金額の根拠を示すことは、本来当たり前のことです。しかし、これまでの政権は国民に「やってる感」をアピールするために目玉政策をぶち上げ、総額何兆円の予算をつけ、これを使って何とかしろ、と中身は担当省庁に丸投げといった、杜撰な進め方がよく見られました。たとえば岸田政権では、「異次元の少子化対策」「こども未来戦略」と銘打って、こども家庭庁を作り、約5兆円という巨額の予算をつけましたが、やることが決まっていないのに、予算だけ与えられても上手く使えるはずがありません。この事業には、このような効果が期待できるから、費用対効果を考えて、いくらの予算をつけますというように、明確な目的と根拠のある歳出を積み上げる予算にしてほしいものです。お金を持ち慣れていない省庁に巨額のお金を渡しても、途方に暮れて、ムダなことに使ってしまうのがオチです。

伊藤由希子氏 Ⓒ文藝春秋

 あと、日本には会計検査院くらいしか予算と歳出のチェック機能がないので、ゆくゆくは、OECD加盟国のうち31カ国で設置されている独立財政機関の機能を設けるべきです。独立性があって、かつ行政から正確な情報を集めることができる機関が予算の費用対効果を検証しなければ、税金の無駄遣いはなくならないでしょう。

的を絞るなら「コンテンツ分野」

 唐鎌 的を絞るべき分野を私が問われたら、コンテンツ分野と答えるようにしています。

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唐鎌大輔氏 Ⓒ文藝春秋

 日本のマンガ、アニメ、ゲーム、音楽などのコンテンツは、インターネットを通じて、世界中で享受されていますが、その黒字によって、「デジタル赤字」を減らすべきだと私は常々提唱してきました。「デジタル赤字」という言葉はかなり浸透してきましたが、改めて説明すると、(1)クラウドなどの「通信・コンピューター・情報サービス収支」、(2)動画・音楽配信を含む「著作権使用料収支」、(3)ネット広告などの「専門・経営コンサルティングサービス収支」という三つのサービス収支を足したものです。2024年のデジタル赤字は合計で約6.8兆円。ただ、支払いが爆発的に増加する一方で、実は(1)と(2)に関しては、受け取りも増えています。(1)で言えば、たとえば海外で日本のゲームのダウンロード版が購入されたり、日本のスマホゲームに課金されたりすると外貨の受け取りが発生します。数年前、任天堂の『あつまれ どうぶつの森』が海外で爆発的にヒットしましたが、その売上は受け取りに計上されます。こうした例がどんどん増えていて、1.5兆円ほどの受け取りになっています。(2)に関しては、ご想像の通り、マンガやアニメが主力で、1兆円ほどの受け取りです。つまり、(1)と(2)を合計すれば2.5兆円ほどの受け取りがあります。

※本記事の全文(約15000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(河野龍太郎×松尾豊×伊藤由希子×唐鎌大輔「忖度なき提言 高市首相の経済政策」)。全文では、以下の内容をお読みいただけます。
・AIは過剰投資ではない
・2026年は「痛みの選択」を迫られる年に
・インフレがもたらす「最大のメリット」

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】芥川賞発表 受賞作二作全文掲載 鳥山まこと「時の家」 畠山丑雄「叫び」/忖度なき提言 高市首相の経済政策/緊急座談会 暴君トランプの新帝国主義

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