振替輸送が始まっても、制度を利用できる人は「定期券」「ICカード定期券」や「紙のきっぷ」を持っている人だけだ。ICカード乗車券の利用者は振替輸送できない。これは「定期券」や「紙のきっぷ」が「目的地まで利用できる権利」を持っているからだ。

ふだん気にかけないことだけれども、定期券や紙のきっぷを買った時点で、鉄道事業者と利用者の間で「運送契約」が成立している。だから鉄道事業者は契約上、目的地に送り届ける義務がある。そのために、ほかの鉄道事業者と振替輸送を取り決めている。事故があったらお互い様。運送契約遂行のために、お互いに協力しましょう、というわけだ。

ICカード乗車券は、鉄道事業者が利用者に「貸与」する契約になっている。ICカード乗車券は改札機から入場するときに目的地を定めない。したがって「目的地までの運送」を約束できない。乗車を放棄する場合に限り、乗車の改札入場を取り消しできる。それだけだ。

ADVERTISEMENT

混雑解消には乗客の協力が不可欠

電車が停まったとき、テレビニュースで乗客が駅員に詰め寄り、運転再開を問いただす場面を見かけるけれども、何の解決にもならず時間の無駄だ。駅員に詰め寄ったところで現実は変わらない。問いただすべき内容は「振替輸送の有無」だ。

目的地に行きたい場合は、その場に留まってはダメ。乗り換え検索アプリなどで迂回ルートを調べて、通勤経路を切り替えよう。そのときに振替輸送があれば利用すればいいし、振替輸送がなければ自腹で移動することになる。どちらにしても、駅に留まるよりマシだろう。

長時間の遅延は防ぎようがないけれど、鉄道の遅延で最も多い原因は「混雑」だ。混雑が解消すれば、最も多い「10分以下」の遅延は消える。乗客もスムーズな乗降に協力して、電車の定刻発車を維持していこう。

杉山 淳一(すぎやま・じゅんいち)
鉄道ライター
1967年生まれ。都立日比谷高校卒。信州大学経済学部、信州大学工学系研究科博士前期課程終了。経済学士。工学修士。IT系出版社でPC誌、ゲーム雑誌の広告営業を担当した後、1996年からフリーライター。ウェブメディア勃興期にニュースメディアで鉄道ニュースデスクを担当したのち、主にネットメディアで鉄道分野を主に執筆。
次のページ 写真ページはこちら