「まるで、異世界の話を聞いてるみたい」
50代のおじさん3人が中学生時代の思い出を話しているのを聞いて、20代の女子大生・西野白馬(福本莉子)はそう呟いた。
フラウ・ボゥ派か、セイラ派か、マチルダさん派か、ハモン派か。『未知との遭遇』、『E.T.』、『竹取物語』の沢口靖子に、「タケちゃんマン」のオープニング……。
街に光化学スモッグ注意報が流れ、レンタルビデオショップが隆盛を極め、竿竹売りの軽トラックが走る。“ビーバップ”的な不良たちが跋扈し、おたく趣味を持つものは迫害され、教師たちの体罰は日常の風景だった――。
確かに、『ラムネモンキー』で描かれている「1988年」は、現代から見ると「異世界」に違いない。けれど、50歳前後の世代にとってはありありとその光景が蘇ってくる。
反町隆史、大森南朋、津田健次郎が“三者三様”の「行き詰まったおじさん」を演じる
それを語っている3人はユン/吉井雄太(反町隆史)、チェン/藤巻肇(大森南朋)、キンポー/菊原紀介(津田健次郎)。
カンフー映画に『機動戦士ガンダム』や『超時空要塞マクロス』など、話題に出てくるものが、当時のトレンドよりも遅れているのは、少し古いものをこそ愛する“おたく気質”ゆえだろう(マチルダvsミンメイなんてたまらない!)。
ユンは大手商社に勤める、いわゆる勝ち組のサラリーマンだったが、贈賄容疑で逮捕され、「俺も、終わった」「何年も裁判を戦って、運良く勝ったとしても、俺は幾つだ? もう、元の職場にも、元の人生にも戻れない」と嘆いている。
チェンは、夢を叶えて映画監督になるもヒットには恵まれず、「原作クラッシャー」などと揶揄され、担当していた作品の監督も降板させられてしまう。フードデリバリーの配達員で食いつなぎながら、「夢ってそんなにいいものかね? あれも中二病の一種で病みたいなもんなんじゃねえか? 一度かかるとなかなか治らないやっかいな病」「気がつきゃ50過ぎてて今さら後戻りもできない」と自嘲する。
マンガ家を目指していたキンポーは、家業を継いで理容師に。認知症の母の介護に追われている。「この歳で夢を追うことなんてできないんだよ。若くて何物にも縛られてなくて、そういう時代に決断しなきゃいけなかったんだ。ユンみたいに成功を目指すことも、チェンみたいにやりたい道に突き進むこともできなかった僕は、ずっとここにとどまるしかない」と彼は言う。
それぞれまったく違う人生を歩みながらも、いずれも人生の行き詰まりを感じている。

