外国人の顔が覚えにくい「他人種効果」

 さて、顔を発見するだけの赤ちゃん期からアイデンティティの認識にいたるまで、いったい何が学習されているのでしょうか。認知科学では、顔を効率的に認識するための「顔認識空間モデル」が考えられています。顔認知が社会にフィットしていく学習を考えるうえで重要なモデルですので、少し詳しく見ていきましょう。

 この顔認識空間モデルは、ここまで見てきたように、それぞれが暮らす社会や文化に合わせて作られます。日本人だったら、洋画を鑑賞中、登場人物が混乱した経験があるのではないでしょうか。日本人の顔認識空間モデルは、よく見る日本人を区別するのに適したものなので、その結果、見る機会の少ない外国人の顔を区別するのが苦手です。外国人の顔が覚えにくいことは、「他人種効果」と呼ばれます。

 顔認識空間モデルでは、見る頻度の高い顔が中心となり、中心ほど密度が濃く集まるため、それらの顔の特徴を使ってその差異をより細かく識別できるようになります。つまり、その社会でよく見る顔を区別することに関してはマスターとなる一方で、不得手な顔も出てくるというわけです。

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 日本人なら日本人の顔が中心となり、日本人の顔を基準に顔を区別します。そして見る頻度の少ない外国人の顔は中心から離れ、日本人の特徴を持たないため識別は雑で、目立って見えることになります。

 得意・不得意はさらに細かく生じ、自分がよく見る同世代の顔は細かく区別できても、世代が離れてよく見ない顔の区別は難しくなります。たとえば、子どもをあまり見ない人であれば、子どもの顔は区別しにくくなります。それぞれの人の顔認識空間モデルにより、区別しにくい顔と区別しやすい顔ができるのです。

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