就労を希望する高齢者の割合は71.9%
こうしたおじ様たちの高い「勤労意欲」はエグゼクティブレベルの話だけのものではない。内閣府の調査で、60歳以上の高齢者に何歳まで収入を伴う仕事をしたいか聞いたところ、「働けるうちはいつまでも」が28.9%と最も多く、次いで「65歳くらいまで」「70歳くらいまで」と、就労を希望する高齢者の割合は71.9%に上った。「仕事をしたいと思わない」という人はわずか10.6%に過ぎなかった。もちろん、経済的理由で働き続けなければいけない人も多いし、精神的にも肉体的にも働き続けることのメリットは大きいだろう。政府の進める「働き方改革」においても、「高齢者の就業促進」が課題として掲げられており、人出不足の折、退職した人が、再び生き生きと仕事を楽しみ、活躍できる環境は望ましい。一方で、「会社や地位にしがみつく」メンタリティには問題も多い。
男性の就業希望者は女性よりはるかに多く、独立行政法人労働政策研究・研修機構のレポートによれば、「男性の引退年齢が女性よりも高い一つの要因は、『仕事人間』『会社人間』とも呼ばれる仕事中心的な現役時代の職業生活にある。仕事以外にすることがないから高齢も継続して働くというわけである」と分析されている。一方で、「女性は現役時代から家庭だけでなく、地域の活動や趣味など、仕事以外の生活領域と幅広く関わっているため、仕事に固執する必要がない」わけで、「仕事しかない」という日本のオジサンたちの生きざまが浮かび上がってくる。
同レポートによれば、就業希望理由としては、「収入が欲しい」(46.8%)が最も多かったが、「働くのは体によい、老化を防ぐ」(26.4%)「仕事が面白い、自分の活力になる」(19.2%)という人も多い。仕事があることで、自分が役に立っている、必要とされているという「自己有用感」を与えてくれている側面もあるだろう。窮屈なサラリーマン生活に辟易とし、文句を言いながらも、実際には、オジサンたちにとっては、仕事が「レゾンデートル」(存在理由)や「生きがい」となってしまっているところは否めないのだ。
オジサンたちが失いたくないのは実は「仕事」だけではなく「名誉」と「名刺」、そして、「生きがい」「自分の存在価値」「居場所」でないだろうか。趣味や職場以外のコミュニティを持たない日本人男性にとって、仕事を失うということは、人の根源的欲求である「人として認められたい」「必要とされたい」という承認欲求を満たす場がなくなることを意味する。仕事に様々な不満を持ちながらも、職場で認めてもらうこと、評価されることが、人生の大きな駆動力になってきた部分は否定できないだろう。
また、仕事における肩書や地位こそが自らのアイデンティティであり、「名刺」という「ドアノックツール」がなければ、知らない人とどう話すのかわからない、という人もいるかもしれない。「〇〇会社元専務」などという「昔の名前」名刺を持って回る人がいる、という「都市伝説」もまことしやかに伝わる。