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職場やSNSの「仮想つながり」にいる限り、真のつらさはわからない

 では、将来、「孤独」にならないためにどうしたらよいのか。まずは、徹底的に「“個”独」を極めることだ。「個独」とは、「個人としての独立・自立」のこと。短絡的に会社を辞めて独立しろ、ということではない。職場やSNSの「仮想つながり」に身を置いている限り、「孤独」の真のつらさを実感することはないだろう。望まぬ関係性や同調圧力に身をゆだねるのではなく、「個」としての独立を確保し、自分に向き合ったときに、人は自分の弱さに気づき、本当の「つながり」の重要性を再認識できるはずだ。そして、与えられた関係性だけに甘んじることなく、自らの意思で、居心地のよいつながりを主体的に作り出したり、選び取っていくことができる。

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 会社の名前や肩書が自分のアイデンティティ、身の回りのことは自分で何一つできない、などという「会社依存」「妻依存」の状態になってはいないだろうか?「依存」と「孤独」は反対語ではない。「何かに依存する人が孤独になる」「孤独な人ほど依存する」のである。趣味やボランティア、地域での活動、近所づきあいなど、ゆるやかで自主的なつながりの中で、自分の存在価値を見出し、頼ったり、支えあう仲間を見つけておくことはこれからの重要なサバイバルスキルとなる。

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 もう一つ、おすすめしたいこと。それは「鎧を脱ぐ」ことである。日本の会社というものは、競馬場に似ている。男性の「競争心」と「プライド」を掻き立てて、競争をさせる。報酬というニンジンの量は、ほかの馬と大した差はないのだが、「やりがい」というニンジンをぶら下げられ、気が付くと、ブリンカー(目隠し)をはめられて、何週も何週もひたすらに、走らされている。そうした競争環境の中で、まさに企業戦士と化し、プライドや、男らしさといった分厚い鎧をまとい、気が付くと、人と胸襟を開いたつながりを作ることができなくなっているというわけだ。「会社」という小さなターフの中で、「自立」した気になっていても、「社会」から「孤立」している可能性もある。

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「しがみつくオジサン」は極端な事例だが、そうした人たちを生み出す“豊かな”土壌が日本にはあるということだ。女性も含め、会社という閉鎖社会に長らく身を置くすべての人の中にある、その「萌芽」を早めに摘み取る意識が大切なのだ。

世界一孤独な日本のオジサン (角川新書)

岡本 純子(著)

KADOKAWA
2018年2月10日 発売

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