お互いの魂を切り結んで、一緒に金子文子を作り上げた

 この映画は最初から「シスターフッドの映画」にすると決めていました。権力側にいる男たちと対峙する文子。彼女の不屈の魂に、最初は敵対していた女監取締(看守)や教誨師といった周りの女性たちが、少しずつ心を引き寄せられていく。その繋がりを描きたかったのです。

 主演の菜葉菜さんには、最初から「あなたならできる」と伝えていましたが、撮影が始まると、まさに文子そのものでした。私がOKを出すのは、彼女の「腹の中から金子文子が出てきた」と感じた瞬間です。演じているのではなく、まさに出てくる。私と菜葉菜さんはお互いの魂を切り結んで、一緒に金子文子を作り上げたような気がします。

©旦々舎

 文子の祖母役を演じてくださった吉行和子さんは、撮影はたった1日、3カットだけでしたが、私の「この3カットで、文子がどんな絶望と怒りの中を生きてきたのかを、観客に伝えたい」という思いに見事に応えてくれました。

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©旦々舎

 この映画で描きたかったのは、自分自身の尊厳を守り抜くということです。権力に忖度しない。自分に正直に生きることは怖く、不安かもしれない。それでも、自分を愛し、自分の尊厳を守り抜くことこそが、本当の自由だと私は信じています。

はまの・さち 1948年生まれ。高校時代に映画監督を志し、68年ピンク映画の業界へ。71年に監督デビュー。以後、監督・プロデューサーとして300本以上の作品を発表。

INTRODUCTION

1923年9月。関東大震災の2日後、朝鮮人の虚無主義者・民族主義者の朴烈とともに検束された金子文子は、皇太子の暗殺を企てたとして、1926年3月大逆罪で死刑判決を受けた。恩赦で無期懲役に減刑され、栃木女子刑務所に送られたが、 7月23日、独房で自死。没年23歳だった。それから100年――。本作は、これまで空白であった死刑判決から自死に至る121日間の、文子のたった一人の闘いを描く。メガホンを取ったのは、1971年にピンク映画で監督デビューし、300本を超える映画を監督・制作してきた浜野佐知。

 

STORY

1923年の関東大震災の際に朴烈(小林且弥)とともに検束された金子文子(菜葉菜)。官民による朝鮮人虐殺を正当化するための逮捕だったが、文子も朴烈も無罪を主張せず、有罪なら即死刑の「大逆罪」を引き受け、日本の国家と真っ向から対峙する道を選ぶ。職業を訊かれ、「現に在るものをぶち壊すのが私の職業です」と答える文子。政府は文子に反省文、転向声明を書かせようとするが、文子はこれを拒否。たった一人の獄中闘争を展開する。その姿を間近に見た女性たち――女囚、教誨師、女監取締たちは文子の激しさ、純粋さに共感を持つようになる。

 

STAFF & CAST

監督:浜野佐知/出演:菜葉菜、小林且弥、三浦誠己、洞口依子、白川和子、吉行和子/2026年/日本/121分/製作・配給:旦々舎/© 旦々舎

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