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「いのちをつなぐ」小説
第2話と第4話は対称形になっていて、主人公が成長するために何を必要なのかがこの2話で自然と示されることになる。産婦人科が扱うのは望まれる妊娠だけではないということ、胎児だけではなく母体もまた守るべき対象であるということもこの第4話ではしっかり描かれる。ここで浮上してきた主題が最後の第5話「コウノトリとんだ」では正面切って扱われることになるのである。
さらに、亜美とまゆの間に絆が芽生える過程がこれらのエピソードに埋め込まれており、第5話で完成を見る。亜美がまゆに、医療関係者はどうしても視界が狭くなりがちだが、広い世界を客観視することも大事なのだと伝える場面では、それまで病院内に固定されていたカメラが屋外へと持ち出され、遠景を映す。物語が一気に奥行きを獲得するのである。その転換があるからこそ、最後にまゆの中に生じる変化には説得力が増す。
先行する〈あしたの名医〉は、一口で言えば「いのちを守る」人々の小説である。それに倣って言えば、『コウノトリとんだ』は「いのちをつなぐ」小説だろう。一人ひとりの生命がこの世にあることは何と不思議で素晴らしいことだろうか。いのちをありがとう、と最後に呟きたくなる。