誰もが用いるデバイスに潜むスパイ

 第1次トランプ米政権が2020年7月に閉鎖を命じたヒューストンの中国総領事館の場合、テキサス州の大学や企業、医療機関が関与していた新型コロナウイルスのワクチン・治療薬の研究データを盗もうとしていたことが、米連邦捜査局(FBI)の捜査結果から明らかになった。中国側は主に買収を手段に使ったが、間に何人もはさんで、犯行がわからないように工夫していたという。FBIの捜査も数年に及んだ。吉永氏は「最近のスパイ行為では、データの入手はサイバー攻撃が主流です。人を介したやり方はスマートではないとみられています」とも語る。

 現代の「スパイ」は、人間ではなく私たちの身近な家電やデバイスに潜んでいる。

 自民党の小野田紀美参院議員(現・経済安全保障相)は2025年4月、国会での質疑で、中央省庁や議員会館で使われている中国製のカメラ付きロボット掃除機から「IoT(モノのインターネット)」を通じて情報が漏洩する可能性を指摘したことがある。

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小野田紀美氏 ©時事通信社

 だが、現職のB氏は更に身近な脅威を語る。

「掃除機に送受信機能があるかどうかが問題ですが、むしろ掃除機よりも中国製スマホの方が問題かもしれません」

 後を受けたC氏は「中国製スマホの場合、中国が独自に展開している全地球測位衛星システムの北斗経由での位置情報を送信できます。ターゲットの位置を相手に知られる可能性があるため、保秘が必要な人間には持たせない方がいいでしょう」という。

 そのうえで、吉永氏もA氏、B氏も世間の一部で「スパイ防止法」に強い関心が集まる背景について「日本人のなかに、中国やロシアの協力者がいるという根拠のない発想があるのではないか」と語る。

 SNSの発達で、左右の意見対立が激しさを増していることの副産物という意味だ。