この映画が夢に一歩近づけてくれた

北村 自分の中で誰かを演じる時は、「(この演技で)映画祭に行きたい」などと思って芝居はしていません。役者としては、それは絶対に考えてはいけないことだし、考えたこともない。でも、それがある意味、本当に特大級のプレゼントとして、こういう国際映画祭というところに呼んでいただいたからこそ、何かを持ち帰りたいんだけど、その実感がやっぱりまだ全然ないというだけなのかもしれません。僕はただただ、この映画が評価されたということが幸せなことだなと、そこに充実感を今ずっと持っています。

 しかも、プレミア上映もソールドアウトして、800人という人が見てくれた。そういう経験って、日本に置き換えるとなかなかないのが現状です。僕は邦画が好きだから、「邦画が世界で評価されてほしい」という夢に、この映画が一歩近づけてくれた、それだけでも自分はけっこう充分なぐらいで……。今後の役者人生にも、この実感があるだけで、すごく満足はしているかなと。やっぱり僕は芝居が好きなだけなので、日本に帰ったらひたむきに仕事をするんですけど。そして日本に帰って、僕はこの一日しかいないから今日という日を幻のように感じつつ、この映画が日本で公開されて、その行く末を見守り切った後に、内山監督と食事でも行けたらもういいかな、というくらいな感じで終るかもしれないです。

 
 

『しびれ』
監督・原案・脚本:内山拓也/出演:北村匠海、宮沢りえ、榎本司、加藤庵次、穐本陽月、赤間麻里子、永瀬正敏/2025年/日本/94分/配給:ナカチカピクチャーズ/©2025「しびれ」製作委員会/9月25日(金)より全国ロードショー

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