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不登校10年の当事者が語る「“不登校後”明るい子と暗い子を分けるたった一つの違い」

学校で評価されないなら、自分で評価軸を作ればいい

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――親御さんの中には、小幡さんは好きなことを突き詰めて仕事にした一握りの成功例、うちの子はうまくいくはずがないと思う方もいるんじゃないでしょうか。

小幡 どうでしょう。やってみないで言っているんじゃないでしょうか。好きなことなら、みんな上手くなるし、突き詰めると思います。それに、大人は仕事に繋がるか繋がらないかという軸で考えすぎです。僕は囲碁もゲームもとことんやって両方とも全国大会クラスに行きましたが、直接仕事にはしていないですからね。でも、囲碁やゲームから学んだことは沢山あります。

学校へ行かない時間を大切に

――不登校を肯定できたとしても、当事者や家族は、不登校後の生き方や、就職の問題で悩むかもしれません。
 
小幡 不登校だったことは、就職のときに、少なくとも有利になることはないと思います。不利になるかは、雇う側の判断によって違うと思いますが。現実として、不登校の子は集団生活に合わない傾向があります。だからこそ、学校へ行かない時間をどう使うかはすごく重要です。

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 いま、不登校の中学生がクラウドソーシングを使って、月1万円稼ぐという不登校支援のプログラムを作ろうと企画しています。記事をまとめるとか、エクセルでデータを作るといった仕事を、1つ数百円くらいで請け負う。中学生がスキルを身につけながら貰えるお給料としては十分です。それなら家でもできますし。

 そこから、WEBデザインに興味を持ったり、ライターになりたいと夢を描く子も出てくるかもしれません。14歳からそれを始めれば、大学生の年齢になる頃にはデザイナーとして8年目、みたいなキャリアを描ける。ただ漫然と大学生活を送ってきた人に負けないスキルを身につけられるはずです。フリーランスの仕事は、不登校の子と相性がいいのではないかと思っています。

©iStock.com

――14歳からのハローワークですね。

小幡 僕も中学生の頃に、遊戯王カードの転売をして、お金を稼いでいたんです。その経験はすごく役に立ったんですよ。どうやったら売れるかを研究して、写真の撮り方、値付け、どういうセットにするか。はじめ、自分は買う側だったんですが、自分が売る側になると段々稼ぐコツが分かってくるんです。その時に培った「ひらめき」は、いまも役に立っています。自分でお金を生み出す経験はすごく大事だと思う。 

 それに、いまや世の中には普通の人には想像しにくい仕事がたくさんあります。例えば、プロゲーマーやゲームを作る仕事に就くことは難しくても、発売前のゲームを徹底的にやり込んでエラーが出ないか検証する「デバッグ」という仕事なら、ゲームが好きなら誰でもできる。知らない人が多いだけで、世の中にはびっくりするほどいろいろな仕事があるし、不登校を経験していても、できることはたくさんあるはずなんですよ。

小幡和輝(おばた・かずき)
NagomiShareFund & 地方創生会議 Founder/内閣府地域活性化伝道師/#不登校は不幸じゃない 発起人
 1994年、和歌山県生まれ。約10年間の不登校を経験。当時は1日のほとんどをゲームに費やし、トータルのプレイ時間は30000時間を超える。その後、定時制高校に入学。地域のために活動する同世代、社会人に影響を受け、高校3年で起業。様々なプロジェクトを立ち上げる。

 2017年、47都道府県すべてから参加者を集めて、世界遺産の高野山で開催した「地方創生会議」がTwitterのトレンド1位を獲得。その後、クラウドファンディングと連携した1億円規模の地方創生ファンド「NagomiShareFund」を設立し、地方創生の新しい仕組みを構築中。Global Shapers(ダボス会議が認定する世界の若手リーダー)に選出。

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