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「学校に合わない人がいるのは当たり前」不登校10年の経験者が示す「学校に行かない生き方」

学校って、不思議な場所だと思うんです

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学校へ行ったほうがいいと思う理由

――「不登校も一つの選択肢」ならば、「学校へ行く選択肢」についてはどう考えますか。「学校へ行く意味」はそもそも何でしょうか。

小幡 僕が学校へ行ったほうがいいと思う理由は大きくわけて二つあります。

 一つは、学校に行くからこそ学べることや、出会える人がいるということです。自分で学びや交友関係をデザインすると、好きなことしかやらないし、共通項のある人としか出会わなくなってしまいます。それは楽しいし、才能がある場合が多いから自分の良いところを伸ばせるのですが、視野が広がりにくい可能性がある。学校で、半強制的にいろいろなことを学ぶからこそ知ることがあるし、学校でなければ出会えなかった人がいると思います。僕の周りには価値観が合う人や共通の趣味がある人ばかり。グーグルの検索と一緒です。自分の知っているワードしか検索しないから、視野が広がりにくい。だから、学校のもつ役割として「視野を広げる」というのはあると思います。

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 二つ目は、コストパフォーマンスがいいということです。単純に「お金がかからない」という経済的な面でもそうですし、多くの方が考えて作られた制度なので、年齢に合わせて自分で学びをデザインする時間と手間を考えると、圧倒的にコストパフォーマンスがいい。学校に行かないという選択肢は決して楽なことではないんです。

全国100カ所で共有しているメッセージ

――小幡さんは、著書の『学校は行かなくてもいい』の中で、不登校の子が増えたら、「義務教育がなくなるのではないか」ということを心配していましたね。不登校を肯定することが、学校教育のスリム化に繋がるという懸念はありませんか。

小幡 僕は、格差によって教育の機会が奪われることはあってはならないと思っています。ですから、学校そのものを否定しているわけではありません。

 僕の家は決して裕福ではなかったけれど、母親が専業主婦で、家で一緒にいてくれたり、いろいろなところに連れて行ってくれました。振り返ると、それが良かったと思います。いま、いろいろな不登校のケースを見ていますが、経済的に余裕のある家庭の場合は、子どもが不登校でもあまり心配がありません。子どもがやりたいことができる環境であれば、学校へ行かなくても教育の場を見つけることができるからです。一方、シングルマザーなどで経済的に不安のある不登校の場合は大変です。年齢によっては、子どもを家に置いて働きに行くことは難しいですから。

――小幡さんが理想とする、「これからの学校」はどんな学校でしょうか。

小幡 カドカワが運営しているネットの高校、N高校はとてもいいと思います。カリキュラムの幅が広くて、起業したい子向けや、体験型の農業プログラムもある。僕は、大学とか、就職というような一つのゴールにこだわらず、個々人にあった学びができる、そんな学校だったら行ってみたかったですね。

(写真=平松市聖/文藝春秋)

小幡和輝(おばた・かずき)
NagomiShareFund & 地方創生会議 Founder/内閣府地域活性化伝道師/#不登校は不幸じゃない 発起人
 1994年、和歌山県生まれ。約10年間の不登校を経験。当時は1日のほとんどをゲームに費やし、トータルのプレイ時間は30000時間を超える。その後、定時制高校に入学。地域のために活動する同世代、社会人に影響を受け、高校3年で起業。様々なプロジェクトを立ち上げる。

 2017年、47都道府県すべてから参加者を集めて、世界遺産の高野山で開催した「地方創生会議」がTwitterのトレンド1位を獲得。その後、クラウドファンディングと連携した1億円規模の地方創生ファンド「NagomiShareFund」を設立し、地方創生の新しい仕組みを構築中。Global Shapers(ダボス会議が認定する世界の若手リーダー)に選出。

 

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