③そして出現した「巨大ザメ」メガロドン
白亜紀末の大量絶滅事件で、ライバルであるモササウルス類は絶えました。
さあ、これで海洋世界は、サメ類の単独天下となった……というわけではありません。新たな強者が、今度は我ら哺乳類の中から出現するのです。
新たなライバルはクジラたち
その哺乳類こそが、クジラ類です。彼らは、陸上種を祖先にもちながらも、水中生活に適応していきます。
今から3500万年ほど前には全長20mに達したとされる巨大なムカシクジラ類「バシロサウルス(Basilosaurus)」が登場、1200万年ほど前には伝説の海のモンスター「リヴァイアサン」に由来する名前を与えられた全長17mのハクジラ類「リヴィアタン(Livyatan)」も現れました。
彼らはただ単純に大きいというだけではありません。
バシロサウルスもリヴィアタンも、鋭く大きな歯をもつ、“圧倒的強者”でした。
メガロドンの「噛む力」はホホジロザメの10倍!
そして、ここでもリヴィアタンの登場と時をあわせるかのように、サメ類にも超大型種が出現しています。
「巨大ザメ」として知られる「メガロドン」です。
メガロドンは、巨大であることはわかっていますが、その具体的なサイズに関してはよくわかっていません。全長が10mを超えることは確実とされ、12mという指摘も、16mほどという指摘もあります。
いずれにしろ、メガロドンが極めて恐ろしい存在であったことは確かなようです。高さ15cmを超える大きな歯をもっていましたし、コンピューターを使った研究によると、その噛む力は現生のホホジロザメのそれと比べて10倍を超えていたと計算されています。大抵の獲物は、一嚙みでサックリといけたことでしょう。
サメ類がたどりついた圧倒的強者でした。
そんなメガロドンも、約260万年前までに姿を消しました。
絶滅理由に関して、「定説」と呼べるものはありません
しかし今なお、全長6mのホホジロザメを擁するサメ類は海洋世界の上位に君臨するグループであり、高い多様性を誇っています。
陸の生命史も面白いですが、海でも多くの動物がダイナミックな物語を紡いできました。
サメ類やその近縁種をめぐる物語は、そのことを教えてくれるのです。
(イラスト=月本佳代美、服部雅人)