「グリンダの心境の変化が表れているわ」
「『The Girl in the Bubble』の歌詞には、グリンダの心境の変化が表れているわ。ブロードウェイミュージカルの舞台で、観客は変化の前と後しか観られなかったけれど、この映画ではまさに変化の瞬間を聴き、目撃できるのよ。この曲では歌い方も、それまでと少し違うわ。グリンダは、楽しく生きていた頃の自分を回想していくうちに、歌声がどんどん素に近くなっていくの」(グランデ)
エリヴォは、「No Place Like Home」の歌詞をじっくり理解することからアプローチしたと振り返る。
「この歌を完全にエルファバのものにするためにね。でも、私にとっては、いつだって歌詞がスタート地点よ。キャラクターは、ここでどんな気持ちなのか。すでにあるメロディが手助けをしてくれるとは言え、歌い手の私は感情の変化、ストーリーを、最高の形で表現していかなければいけない。前編でも歌う『I'm Not That Girl』が、良い例ね。あのシーンの撮影をしているとき、ジョン(監督)は、あの歌は強い絆が感じられた直後に歌われるということに、あらためて気づいたの。それで、エルファバが最初の歌詞を口にする前に、あえて少し沈黙を入れたのよ。エルファバ自身が認めていることをより強く表現するために。ミュージカルの歌は、ただ美しく歌えばいいというのではない。そういった熟考のプロセスが必要なの」
「この映画はいわばアンダードッグが集まって作ったんだ」
この成功と反響は、三人にとって決して約束されたものではなかった。絶大な人気があったグランデだが、3カ月も歌の特訓をした上でオーディションを受け、この役を勝ち取っている。そして前編の演技でキャリア初のオスカー候補入りを果たしたのだ。
エリヴォはすでに女優としての実力を認められていたが、この映画で世界的な人気女優となった。
監督のチュウは、台湾からの移民を母に、中国からの移民を父に持つアジア系アメリカ人。これまで『ステップ・アップ2:ザ・ストリート』(08年)『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』(16年)など、主にメジャースタジオの続編でキャリアを積んできた彼にとっても、これは待ち望んできた大出世作だった。前作に当たる、同じくブロードウェイミュージカルの映画化『イン・ザ・ハイツ』(21年)の興行的失敗を乗り越え、ようやく成功をつかんだ。
「ベストを尽くして作った『イン・ザ・ハイツ』を誇りに思っているけれど、あまり多くの人には見てもらえなかった。映画と共に殺されたようなものだ。だから、『こんな大作が僕に務まると、誰にも思われてない。でも、二度殺されることはないんだし』と思って取り組んだんだ。シンシアも『誰も私を映画スターとは認めてくれてない』と言っていた。この映画はいわばアンダードッグが集まって作ったんだ。そもそも、劇場で映画を観る文化自体が死んだと思われていたからね。僕たちに失うものはなかったのさ」(チュウ)

