今回行われるWBC 2026の投手陣で中心的な役割を担う山本由伸投手。2022年にリックス・バファローズがリーグ連覇、そして26年ぶりの日本一を飾った際も、エースである同投手がもたらした功績は計り知れないものだろう。
当然、彼のようになりたいと思う若い選手も多くいるはずだ。しかしオリックスで2010年からスカウトとして“金の卵”を探し続けている山口和男氏は「山本選手の真似をしてケガをする野球少年がよくいる」と語る。それは一体なぜなのか?
スポーツ・ノンフィクション作家の中島大輔氏による『山本由伸 常識を変える投球術』(新潮新書)の一部を抜粋し、紹介する。(全2回の2回目/最初から読む)
◆◆◆
「柔らかすぎる」話題を呼んだ練習風景について山本が語ったこと
毎年秋に開催されるドラフトに向けて候補選手の視察を行うなか、山口は何か引っかかることがあると山本の高校時代の映像を見返している。一つの指針になるからだ。
「下半身や体幹の使い方は高校の時からほぼほぼ変わっていないんですよ。身体の使い方で変わっているのは、胸郭や腕の使い方ですよね。変化したのはそこだと思っています」
山本が名を揚げる過程で知られるようになったのが、ブリッジなど独特の練習法だ。四肢を地面に着いたまま体を反らし、文字どおり橋をかけるようなブリッジの態勢になり、右手、左手、左足、右足を順番に上げていく映像がユーチューブに公開されると、「柔らかすぎる」と話題を呼んだ。山本によれば、先天的に柔軟性を備えていたわけではないという。
「1年目のオフシーズンに筒香さんと自主トレを一緒にやらせてもらって、自分で言うのもあれですけど結構頑張って。じつはあの練習も、柔らかさを求めたわけではないんですよ。柔らかさに見えて、強さと言うか。例えばブリッジの練習も、あの映像を見た人は『身体が柔らかいね』ってみんな、絶対言うんですよね。でも本当に鍛えているのは柔らかさじゃなくて、強さを鍛えているんです」
山本の躍進の背景は、この説明が象徴しているように感じる。
彼との対話が面白いのは、ヒントを与えてくれる一方、決して皆まで語らないところだ。
だからこそ、“誤解”を呼ぶのかもしれない。
