山本由伸をマネしてケガする野球少年

 山口はドラフト候補を探し歩きながら、しばしば耳にする話がある。

「最初に由伸の投げ方を見てうちの球団が故障を心配した点が、アマチュアの選手たちに見事に当てはまっていますね。アマチュアスカウトで練習を見に行ったときに、由伸が持っている棒状の器具を振っている光景をよく目にするんですけど、その後、故障したとよく耳にします。今の時代、ネットでいろんなことを調べられるので、根本的な土台づくりを知らないまま自分にとって“都合のいいところ”だけを切り取ってやってしまい、悪い影響を受ける例がたくさん出ていると思うんですよね」

 ユーチューブやSNSの普及は野球界にも大きな成長をもたらした。デジタルネイティブの中高生はスマホで情報を探し、自身の飛躍につなげている。高校球児と話していると、「ジャイロ成分」や「回転軸」という言葉が当たり前のように出てくるほどだ。

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 同時に、“合理化時代”ならではの弊害も数多く生じている。ブリッジや、やり投げをすれば自分も山本由伸のようになれると思い込み、深層を探ろうとしないのだ。結果、故障に至るケースもある。

©文藝春秋

 鍼灸師の資格を持つ高島の下にも、山本の投げ方を真似して肘を痛めたという野球少年が10人以上やってきたと明かす。

「山本選手のように胸郭の柔らかさがない中学生がフォームだけをマネして、肘を痛めるケースがよくあります。山本投手は『こうやって力を伝えたい』と取り組んだ結果がああいう投げ方になっているのに、周りが『じゃあ、この投げ方をすればいいんだ』というのは安易すぎますよね。マネをするなら、考え方をマネしてほしい。エクササイズを見ても、なかなかできないレベルの動き方をしています。おそらく周囲にアドバイスをもらいながら、自分で考え方をちゃんと構築していく能力が高いんだと思います」

 なぜ、高卒2年目の山本は前例のない投げ方にたどり着いたのか。

 周囲の猛反対に遭っても、強い意志を持って自身のアプローチを貫くことができたのだろうか。

 その強さはいつ、どこから生まれてきたのか。

 変身のきっかけになる出会いは、プロ入り1年目の4月にあった。

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 この続きは『山本由伸 常識を変える投球術』(新潮新書)で読めます。

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