今回行われるWBC 2026の投手陣でも中心的な役割を担う山本由伸投手。

 オリックスで2010年からスカウトとして“金の卵”を探し続けている山口和男氏は、同投手のピッチングが高校3年春の時点ですでに「一軍半レベル」だったと語る。しかし、高校卒業後に登録して挑んだドラフト会議では、彼の名は4巡目まで呼ばれることはなかった。その理由は一体なぜか?

 スポーツ・ノンフィクション作家の中島大輔氏による『山本由伸 常識を変える投球術』(新潮新書)の一部を抜粋し、紹介する。(全2回の1回目)

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山本由伸 ©文藝春秋

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スカウトの眼力

 なぜ、山本ほどの逸材がドラフト4位まで残っていたのだろうか。

 プロ入り後に鮮烈な活躍を見せれば見せるほど不思議に感じられ、各メディアには“答え合わせ”の記事が掲載された。

 2016年、オリックスは1位で東京ガスの山岡泰輔を単独指名、2位では立正大学の黒木優太という両右腕投手を獲得した。ともにスピード豊かなストレートと決め球になる変化球を誇り、いわゆる「即戦力」タイプだった。プロ入り1年目に山岡は先発で8勝11敗の成績を残し、一方の黒木はセットアッパーとして55試合に登板したように、二人ともアマチュア時代から「一軍レベル」に達していた。

 ドラフトの氏名にはチームの置かれた状況が大きく関わってくる。当時、オリックスは仰木彬監督時代の1996年に巨人を破って日本一に輝いて以降、長らくの低迷期からなかなか抜けられずにいた。2000年以降はAクラス入りが2度しかなく、福良淳一監督(現GM)が就任した2016年は最下位に沈んでいる。一人でも多くの即戦力の指名が優先されるチーム状況だった。

 球団と選手の“運命”は他チームの動向にも左右される。山本を高く評価する球団が他にあれば、当然、先に入札される可能性が出てくる。他球団の指名に関する情報はさまざまに行き交うもので、相手の胸の内を探りながら指名順位を決めていかなければならない。

 今や「日本のエース」と言われる山本だが、高校生時点では、プロから高く評価されにくい理由がいくつか考えられた。