「150キロ投げられて、カットボールもスライダーもフォークもある。当時で177センチぐらいで、ちょっと小粒に見えた。伸びしろがどうかな……っていうのはありましたね」

 他球団のスカウトによる当時の評価が「Number Web」の記事で紹介されている(オリックス山本由伸23歳、5年前“ドラフト4位”まで他の11球団は指名しなかった…他球団スカウト「当時177cmでちょっと小粒に見えた」より)。

 日本人の成人男性の平均身長は168センチだが、プロ野球選手はずっと大きい。2022年2月28日時点でNPB(日本野球機構)に支配下、育成登録されている投手502人の平均身長は181.9センチで、山本は5センチほど及ばない(「Yahoo!個人」の記事「現役プロ野球選手の『身長・体重ランキング2022』。身長差は40cm近く、体重左派50kg以上」より)。

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 日本を代表する投手たちは、196センチのダルビッシュや193センチの大谷、190センチの佐々木朗希(千葉ロッテマリーンズ)、186センチの千賀などのように高身長を誇っている者が多い。球速や球威は身長、体重との相関関係が大きく、背丈が高ければ筋肉をつける余地もそれだけ大きいことを意味する。だからこそ、スカウトは身長を一つの指針としているわけだ。

 ただし、身体が大きくなければ速いボールを投げられない、というわけではない。

 例えば、山本と同期入団の山岡が172センチ、68キロの痩身から最速152キロのストレートを投げられるのは、垂直跳びで80センチを跳ぶほどバネを備えていることが大きい。自主トレを担当するトレーナーの高島誠によると、チームメイトで190センチ、104キロの“ラオウ”こと杉本裕太郎が思い重量を挙げるのに苦労している横で、山岡は同じバーベルを軽々と持ち上げていくという。それほど瞬発力に優れ、投球時の力につなげられるのだ。

 かたや、177センチの山本は高校時代に最速151キロを計測し、プロ入り6年目の2022年には同159キロまで伸ばしている。山口はそんな逸材を球団に推薦する上で、身長の不利を覆すだけの根拠を持っていた。

©文藝春秋

「骨格です。177センチはプロのピッチャーの中では平均より少し低いくらいの身長だと思うけれど、骨格がしっかりしていたので、身長に関してはあまり気にしていなかったです」

 骨格は言わば、身体の支柱だ。骨の周りに筋肉は発達していく。身体の中にしっかりした土台があれば、バランスよく成長していけるはずだと山口は見通した。

 球界の“常識”と異なる山本由伸という投手の出現は、固定観念に捉われないスカウトの眼力も大きかった。