クラウドナイン代表取締役社長・千木良卓也氏は、今年の5月、米国カリフォルニア州パサデナ(ロサンゼルスエリア)にあるBrookside at The Rose Bowlで、日本人アーティストによる音楽フェスティバル「Zipangu(ジパング) JAPANESE MUSIC EVENT 2026」の開催を予定している。そのきっかけとなった経験について、千木良氏が語った。

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「これで満足していいわけがない」

 きっかけは昨年3月。米ロサンゼルスで行われた日本のアーティストによる音楽フェス「matsuri ’2‌5」での苦い経験でした。出演したのは、Ado、新しい学校のリーダーズ、YOASOBIの3組です。押しも押されもしない現代日本のトップアーティストたちです。現地で観た彼らのパフォーマンスは最高でした。ステージの上で本当にキラキラと輝いていて眩しかった。

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プロフィールもイラストのAdo

 しかし、会場はピーコックシアターという中規模のアリーナで、収容人数は7000人だったんです。明らかにアーティストの実力と会場の規模、集客数が釣り合っていないと思いました。この日のために日本からやってきた業界関係者も多かった。海外のお客さんが会場を埋めていたわけでは決してなかった。そういう意味でも、本当の海外フェスとは言えないのではないか。そう思いました。関係者の中には、海外公演を無事に終えたという事実において満足できる人もいたのかもしれませんが、私は「これで満足していいわけがない」という悔しい思いで頭がいっぱいでした。

千木良卓也氏 Ⓒ文藝春秋

 詳しくは後述しますが、Adoは欧米を含めたワールドツアーで50万人を動員できるアーティストに成長してくれました。彼女のコンサートの観客に日本人はほとんどいません。観に来てくれるのは、ほぼ現地の欧米人なのです。彼女は顔を出さない歌い手です。ステージでも観客は彼女のシルエットしか見えません。歌は基本ほとんど日本語。それでも、日本の音楽の魅力は欧米の人たちに、しっかり伝えることができる。問題は大きな会場と観客を用意する役割の私たちビジネスサイドにあります。

 私の目から見ると、海外のトップアーティストと日本のアーティストの間には、売り上げなど見た目の数字が示すほどの実力差があるとは思いません。それはこの2年、Adoと一緒に世界ツアーを回ってみて感じた、偽らざる本音です。だから「私たちならできる」というパッションで、matsuriの直後にリベンジを決めました。たった1年前に思い立った企画ですが、全身全霊で取り組んできました。

 では、なぜどうしても今でなきゃダメなのか。その理由は三つありました。