アジアポップの下降トレンド
まず、トレンドの問題です。言うまでも無く、音楽には流行があります。音楽性の高さとビジネススケールはイコールではない。その意味で、今は日本の音楽が世界的ブームに乗るラストチャンスだと、私は考えています。
今でこそ、海外でも日本人アーティストの作品が少しずつ聴かれるようになりましたが、実はこのトレンドはもう下降気味なのではないかというのが私の実感です。例えば、世界的音楽アワードであるグラミー賞。今年2月の最新回でもその兆候が見えつつあります。10年ほど続いてきたアジアブームは終わりかけているんです。
私は2025年からグラミー賞の投票権を持ちました。現地で世界の音楽のトレンドを肌で感じる機会も多いのですが、ブルーノ・マーズ、テイラー・スウィフト、ビリー・アイリッシュ、バッド・バニー……グラミー賞の常連アーティストは、当たり前ですがやはり欧米の出身者が多い。シンプルにグラミー賞はテレビで放送される音楽番組なんです。つまり、常に高い視聴率を獲得することが求められる。そこで全世界の各地域で広く番組を観てもらうために、グラミー賞はこの10年、アジアをクローズアップしてきました。
その波にうまく乗り、「私たちがアジアです」と世界に顔を出したのが、韓国でした。彼らは欧米マーケットのニッチな部分を取っかかりにして、この10年で世界にK-POPを売りだしたのです。
しかし韓国音楽界は、すでに潮流の変化にいち早く気が付いています。BTSを送り出した音楽事務所のHYBEは、3、4年も前から次のブームといわれるラテンミュージックのアーティストやレーベルに興味を示し、買収したりしています。
厳しい言い方をすると、いまの世界の音楽シーンを俯瞰してみれば、アジアポップ人気の残り香に、日本人がちょっと入ったというイメージでしょうか。
※本記事の全文(7000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年4月号に掲載されています(千木良卓也「音楽 Adoと学んだ欧米流ビジネスモデル」)。全文では、以下の内容が語られています。
・世界に日本を観てほしい
・鳥肌が立ったAdoの歌
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