エネルギー 日米韓は次世代原発で勝負しろ

首相肝いり「重点17分野投資」にモノ申す

田中 伸男 IEA元事務局長
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福島原発のデブリも処理できる

 いま、世界のエネルギー環境が大きな転換点を迎えるなかで、各国とも「エネルギー戦略」の立て直しを迫られています。

 まずAIの普及に伴い、データセンターなどで電力需要が急増しています。さらに長期化するロシアのウクライナ侵攻や緊迫化する中東情勢などにより、石油や天然ガスの供給が不安定化している。加えて地球温暖化に伴って脱炭素も求められ、再生可能エネルギーや次世代原発などの開発競争も激化しています。国際エネルギー機関(IEA)の現事務局長ファティ・ビロル氏の言葉を借りれば、「石炭・石油の時代から、『電気の時代』へと急速に移行している」のです。

 こう語るのは、元経産官僚で、日本人で初めてIEA事務局長を務めた田中伸男氏だ。氏はエネルギー政策全般に詳しく、なかでも次世代原発に精通する。

 高市早苗首相は昨年10月の所信表明演説で、「次世代革新炉やフュージョン〔核融合〕エネルギーの早期の社会実装を目指す」と述べた。とはいえ、福島第一原発事故を経験した日本社会には、原子力エネルギーの安全性に対する不信感が消えていない。最近も新潟県・柏崎刈羽原発で再稼働直後に制御棒トラブルが発生し、静岡県・浜岡原発では中部電力によるデータ不正も発覚した。こんな状況で、なぜ原子力を活用すべきなのか。

国家戦略としての「脱炭素」

 IEAが設立されたのは、1974年のことです。第一次オイルショックを受けて、エネルギーの安定確保に危機感を抱いた先進国が連携してつくられました。

 エネルギー安全保障の観点から見て、現在は、当時とはまた違った“地政学的構図”が浮かび上がっています。「ペトロステート(石油国家)」と「エレクトロステート(電気国家)」の覇権争いです。

田中伸男氏 Ⓒ文藝春秋

「ペトロステート」とは、米国やロシア、サウジアラビアなど石油や天然ガスを自前で賄い、化石燃料を重視する国家のことです。「ドリル・ベイビー・ドリル(掘って、掘って、掘りまくれ)」という米国のトランプ大統領のスローガンが、この戦略を象徴しています。

 他方、「エレクトロステート」とは、欧州や中国など化石燃料に乏しい国家のことで、代わりに原発や再生可能エネルギー、すなわち脱炭素エネルギーに力を入れています。

 なかでも中国は、脱炭素分野で覇権を握るべく、バッテリーやモーターといった先端技術やこれに不可欠なレアアースなどの鉱物資源の輸出あるいは禁輸を“国家戦略”に位置づけている。早くも1992年に「中東に石油あり、中国にレアアースあり」と述べていた鄧小平氏の言葉が、今さらながら“予言”のように響いてきます。

 つまり、脱炭素戦略も、「地球環境にやさしい」といった“倫理”以上に、「化石燃料の輸出国に依存しない」という“地政学的な覇権争い”の一環として進められているのです。国際政治学者のイアン・ブレマー氏率いるユーラシア・グループが、今年の「世界10大リスク」の2番目に〈「電気国家」中国〉を挙げているのも、そのためです。あたかも“地球環境保護の先導役”であるかのように振る舞っている欧州にしても、国益第一で動いていることに変わりはありません。

 エネルギー地政学において、各国がどんな条件に置かれているかを端的に示すIEAのグラフがあります。石油と天然ガスの輸出と輸入の割合にしたがって各国を位置づけたものです。

 これを見ることで、各国がどんな戦略をとるべきか、どの国と連携するのが得策か――軍事的な安全保障を自国で完結できる国が稀であるように、エネルギー安全保障も他国との連携が鍵を握る――ということも見えてきます。

 例えば、かつては石油も天然ガスも輸入していた米国は、シェール革命によって双方とも輸出する国に変貌しました。だからこそ、「ペトロステート」の道を進んでいる。

 このグラフで特異な位置を占める国は二つ。石油も天然ガスも100%輸入している日本と韓国です。

日韓共通の弱みと強み

 日韓は、エネルギー安全保障上、最も過酷な条件の下に置かれているわけですが――だからこそ、選択肢は自ずと限られますが、同じ境遇にある日韓の相互協力は互いに利益をもたらす可能性があります。今後、両国が目指すべきは、「再生可能エネルギー」と「水素エネルギー」と「原子力」の活用しかありません。

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source : 文藝春秋 2026年4月号

genre : ニュース 国際 テクノロジー